今後5年は過去50年より大きな変化が起きる

3強以外に目を向けても、欧米大手のフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は5月、グーグルの持ち株会社アルファベットと自動運転車開発での提携を発表した。日本勢もソフトバンクとAI分野での共同研究を進めるホンダは今年9月、研究開発子会社の本田技術研究所が東京・赤坂にAIの研究拠点を開設するなど、世界の自動車大手を異次元領域でのイノベーションに駆り立てている。

その背景にあるのは、自動車産業の急激な変化に対する危機感だ。AIを活用した自動運転技術の進展はIT企業の伸長を促し、既存の自動車産業が地殻変動を起こしかねない。ライドシェアやカーシェアリングといったシェアリングエコノミーの台頭に至っては、「保有する」から「利用する」へと消費者の価値観が移り、自動車が代表格だった大量生産・大量消費時代の終わりを告げる可能性すらある。こうした既存自動車産業の危機感を象徴するように、GMのメアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)は「今後5年は過去50年より大きな変化が起きる」と、今後、自動車産業に押し寄せる変革の波への備えを力説する。

円安・株高から円高・株安へと潮目が変わり、2017年3月期で5年ぶりの減益を見通すトヨタの豊田章男社長は、アベノミクスによる円安基調で潤ったこれまでを「追い風参考記録」と例え、これからは「等身大」での勝負と身構える。しかし、等身大の姿は足元、あるいは先行きの数年しか見通せないのが事実で、近未来を見据えた異業種空間へトヨタを誘い込む。

産業革命級の激震に見舞われる近未来の自動車産業にとって、既存の自動車大手が主導権を握ったままでいられるかは何の保証がない。自動運転をめぐっては米アップルの参戦も観測されるなど、IT企業との覇権争いは激しさを増す一方であり、新旧勢力入り乱れた生き残りを賭けた戦いは始まったばかりだ。

(宇佐見利明=撮影)
【関連記事】
豊田章男社長が「もっといいクルマをつくろうよ」と言い続ける理由
世界2冠同時受賞! なぜマツダ「ロードスター」は世界で愛されるのか
三菱自動車は存続できるのか
自動車、飛行機の「自動運転」はどこまで進んでいるのか?
人工知能(AI)は、“原子力”問題である