経営者が着目する「儲かる仕組み」

一方で、飲食店経営者がダイニング型のそば業態に注目するのにも、いくつかの理由があります。ひとつはまだ比較的ライバルが少ないこと。近年の外食産業では総合的な料理を出すよりも、より専門性の高い店の方が支持されやすい傾向にありますが、そんな中、ダイニング型そば店は専門性が高いながらも、まだ強力なライバルの数が限られているのです。

ふたつ目として、収益性の高さも挙げられます。「俺のフレンチ」や「いきなり! ステーキ」などの登場により、業界内では「高原価傾向」が強まっています。お客にとってはうれしい話ですが、飲食店経営にとっては厳しい流れであることは言うまでもありません。それに対して、立ち食い型を除くとそばは比較的高い値付けが可能で、利益を出しやすい商材です。またダイニング型はお酒を頼むお客も多いので、このことも収益性アップに貢献してくれます。

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日本のそば消費量は、実は多くない!

そしてまだごく一部ではありますが、3つ目の理由として「海外展開のポテンシャル」を視野に入れている経営者もいます。海外では日本のラーメンが大人気ですが、次にうどんが流行るのではないかと言われています。気の早い経営者はさらにその先にあるトレンドとして、外国で戦える「SOBA」を見据えているのです。

とはいえ、これは必ずしも夢物語とは言えません。少し古いデータではありますが、FAO(国連食糧農業機関)の2008年の統計によれば、ロシアや中国、そしてフランスは日本よりもそばの消費量が多いのです。またアメリカにおいても日本の4分の3程度の消費量があります。世界では粥やクレープなどの食べ方が多く、日本のように麺の形で消費しているわけではありません。しかし、そもそも消費のベースがあるわけですから、世界中で「SOBA NOODLE」がメジャーになる日も決して遠くはないかもしれません。

子安大輔(こやす・だいすけ)●カゲン取締役、飲食プロデューサー。1976年生まれ、神奈川県出身。99年東京大学経済学部を卒業後、博報堂入社。食品や飲料、金融などのマーケティング戦略立案に携わる。2003年に飲食業界に転身し、中村悌二氏と共同でカゲンを設立。飲食店や商業施設のプロデュースやコンサルティングを中心に、食に関する企画業務を広く手がけている。著書に、『「お通し」はなぜ必ず出るのか』『ラー油とハイボール』。
株式会社カゲン http://www.kagen.biz/

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