銀行の歴史を振り返ると、この20~30年の間に起きた変化の大きさに、いつも軽いめまいを覚える。友人が銀行に就職したとき、皆、別々の銀行にいったはずだった。あの銀行がいいか、この銀行にしようかと迷った者も少なくなかった。しかし、今や都銀はメガバンク数行に統合され、別々の道を歩んだはずの友人が同じ銀行にいる。まさかつぶれはしまいと思っていた銀行に就職した友人は、今や銀行業界と遠いところにいる。

本書は、そのような激動の時代、銀行の内外で一体何が起きていたのかを、かなり内部にまで切り込んで書かれた迫真のドキュメントだ。著者は日本経済新聞社の編集委員であり、長年の取材に裏打ちされた記述には、臨場感があり、迫力がある。

具体的には、大和銀行や長信銀3行のたどった歴史や、メガバンク誕生の経緯、当時の金融行政の実態等、1995年から2015年までの20年間の銀行業界の歴史が、かなり詳細に、しかし、テンポよく小説を読むかのような読みやすさで語られている。

また、たとえばりそな銀行の改革に力を尽くし12年に67歳で帰らぬ人となった細谷英二氏に関する詳細な記述等、人間ドキュメントとしての色彩も強く、単なる歴史的記述に終わらない深みがある。

著者の長年の取材経験から導かれた独自の推理や解説も随所に盛り込まれている。外側から変化を見ていた人には、そんなことが中では起きていたのかという新たな発見があるだろうし、中にいた人たちにとっては、確かにそうだったと膝を打つ記述も多いに違いない。

そして本書の大きな特徴は、そのような事実関係を記述したドキュメントだけではなく、金融とは何か、銀行とは何かといった学術的な内容も優しく解説している点だ。その結果、予備的知識がない読者にも銀行業の中身がよく理解できるようになっている。

その意味では、本書は単なる歴史的な記述にとどまらず銀行論の優しい解説書にもなっている。

銀行業をめぐっては、近年、人工知能等の急速な発展を背景として、フィンテックと呼ばれる新しい金融の動きが注目され、連日マスコミを賑わせている。場合によっては、銀行業がなくなってしまうような大きな変化が起きると予想する論者もいる。今後は、今まで以上の激動が銀行業を襲うのかもしれない。

もちろん、その変化を今完全に予想することはできないし、またどのような大きさの変化になるのかも定かではない。しかし、このような激動が予想される時代にこそ、過去を振り返り、銀行、そして金融業の今後を考えることが重要なのではないだろうか。そして、本書にはそのための材料がふんだんに提供されている。