現在の拠点はインドネシア

【田原】タイの事業は軌道に乗った。でも、いまは別のことをやっていますね。どうして?

【牧浦】ある程度軌道に乗ると、広告を打てばユーザーが増えるという世界に入ってしまうので、僕はやることがない。だから次はドローン事業をやりました。

【田原】どうしてドローン?

【牧浦】アマゾンがスイスの工科大学のドローン研究所を買収したというニュースを聞いて、次はこれだ! と思ったんです。いままで地面というワンレイヤーで物を運んでいたのに、ドローンを使えばマルチレイヤーになる。これは物流業界に革命が起きると思って、東大の人たちと一緒にドローンをつくりはじめました。

【田原】すでに売っていますよね。

【牧浦】いま市場で売られているのは基本的に空撮用です。一方、物を運ぶドローンは製造が難しい。運ぶ荷物が左右対称でないとバランスを崩しやすく、バランスを崩したら自立制御で軌道修正しなくてはいけません。それができるドローンをつくるとなると、コストもかさみます。結局、1台つくったのですが、500万円くらいかかってしまった。東大からもこれ以上お金は出せないと言われたし、僕も蓄えをかなり吐き出しました(笑)。

【田原】じゃあドローン事業はストップですか。

【牧浦】製造にお金がかかるし、ビジネスモデルもまだわからないところがあるので、いまは研究開発だけやっています。といっても僕はハードウエアをつくれないので、また別の事業をやっています。

【田原】展開が速い(笑)。次は何を。

【牧浦】また教育です。DeNAの共同創業者だった渡辺雅之さんがロンドンで立ち上げたQuipperというベンチャーがあります。「QuipperSchool」という教員向けの管理サービスをグローバルに展開しているのですが、去年買収されてリクルートの傘下に入りました。そのときにリクルートで「受験サプリ」を立ち上げた山口文洋さんから声をかけてもらって、僕もQuipperに加わりました。いま「受験サプリ」のグローバル版である「QuipperVideo」をインドネシアで展開していて、僕はそのマネタイズと世界展開の仕事をインドネシアの拠点でしています。

【田原】いまはリクルートの社員?

【牧浦】そうですね。正確にはリクルートマーケティングパートナーズの海外子会社ですが。

【田原】いままで独立してやってきたのに、就職すると不自由じゃない?

【牧浦】そんなことないです。思いきり自由にやらせてもらっています。飛行機のチケットの手配をサポートしてもらえるし、交渉でリクルートの看板も使えるので、とても楽です。この生活をあと1年続けたら、もう元の生活に戻れないかもしれない(笑)。