2016年3月8日(火)

構造転換を迫られる紙パルプ業界

PRESIDENT 2015年12月14日号

著者
桑原 明貴子 
メリルリンチ日本証券アナリスト(ディレクター)

メリルリンチ日本証券アナリスト(ディレクター) 桑原明貴子 構成=衣谷 康

現在のような世界的な景気変動が起こりやすい状況下では、それを成長の機会にできる企業と、それが難しい企業がある。設備投資から回収までの期間が長い製紙業界は、残念ながら後者だろう。

紙の用途は大きく3つ。新聞や雑誌、コピー用紙などの情報媒体、商品などを包むパッケージ、ティッシュやトイレットペーパーなどの日用品だ。最大用途は情報媒体で、全体の40~45%を占める。しかし、2000年をピークに徐々に需要が減少し始め、08年のリーマンショックで一気に落ち込んだ。以降も年2~3%ほどのペースで減り続けている。直近でも電子化進展が、情報媒体としての紙の需要を押し下げている。

加えて、中国勢の台頭が大きい。中国は当初、紙の消費国として期待されていたが、情報媒体の紙に関しては生産能力増加が需要増加を上回る。日本の印刷用紙の輸入割合は10%ほどだが、その半分ほどは中国。安価な中国製印刷用紙輸入により、国内の価格も上げにくい状況だ。

各社とも事業構造転換や業界再編、設備集約等を迫られているが、まだ先は見えない。印刷用紙国内1位の日本製紙は、東日本大震災で主力の石巻工場が被災し、その立て直しで財務状況が悪化。負債圧縮を続けているが、業界再編や大規模な海外展開に十分な財務余力を持つには至っていないと考える。同4位の大王製紙と3位の北越紀州製紙は距離も縮まっておらず、「第三極」作りも進んでいないように見受けられる。

一歩リードするのは同2位の王子製紙だ。国内では早くから情報媒体用途の減少を予測し、設備を集約。安定需要が見込めるパッケージ事業を拡大してきた。海外のパルプ会社や段ボール会社を買収する等、海外展開でも1日の長がある。

情報媒体用途の需要減少の底はまだ見えない。他社も事業構造転換加速が喫緊の課題となっている。

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