「番長」はマシュマロにむしゃぶりついた

さて、研究者が部屋から出て行った途端にベルを鳴らしてマシュマロにむしゃぶりつく子供の様子を果たして大人たちは笑うことができるでしょうか。

●新年の計画でタバコをやめると決意し、部屋中のタバコを水につける。しかしその後、またタバコを買いに行く。
●会社帰りにコンビ二に寄ってスイーツを買うのをやめると決意する。しかしその後、「自分へのご褒美」をあげなければならないと感じて、再びコンビ二に立ち寄る。
●パチンコで大負けして、財布の中には電車代の1000円しかなくなる。しかしその後、その1000円も台に飲み込まれてしまい、またキャッシングに走る。
●ゲームで高額の課金をして、無駄遣いした自分に腹が立ってスマホを投げつける。しかしその後、自分で壊したスマホを修理したはいいが、またゲームを再開する。
●不倫をして慰謝料を請求されて離婚する。しかしその後、別の人と不倫をする。

これ、マシュマロにむしゃぶりつく子供とどこが違うでしょうか。

こうした目の前の多くの欲望こそがコップに水を溜まらなくしてしまっている「犯人」です。これらすべての衝動は小さいながらも着実に資産を蝕みます。

特に最後の離婚については、これまで長年の間夫婦で協力し合って形成してきた資産に対して破滅的な悪影響を与えます。人々はその悪影響度は大きいと気づいているのに、離婚する人は絶えません。

快楽と幸福は違います。

薬物中毒で逮捕されたことが原因でキャリアが台無しになった事例をあげるまでもなく、一時の快楽がその後の人生におけるキャリアや家庭生活、幸福を台無しにする例はこの世の中にはあまりにも多いです。長期にわたって幸福を追求したいのであれば、一時の快楽を抑制する自制心が必要になります。

これは、資産形成においても全く同じです。

今の自分に資産を割り振ることなく報酬を先延ばしにすれば、生涯をトータルした場合に圧倒的に多くの報酬が得られます。しかし、自制が効かない大人は少なくない。こういう人は一度、マシュマロ実験の結果をよく確認するといいでしょう。