【田原】問題は資金をどうやって集めるか。将来は大きな事業になるといっても、まだ現実味がなくて、投資家や企業は反応が悪そうですが……。

【袴田】最初は企業スポンサーさんが集まらず、まず支援していただくことに決まったのはエンジェル投資家の方でした。私たち若い世代の人間が新しい世の中をつくろうとチャレンジしていることに共感してくださったようです。ただ、それからベンチャーキャピタルにも資金を入れていただいたり、IHIさんもスポンサーになっていただいています。

【田原】なるほど。肝心のロボットの開発はどうですか。いま目の前にローバーがあるけど、これは本物?

【袴田】はい。宇宙に行くのはこれより一回り小さいローバーですが、実験で走らせたのはこれです。

【田原】ローバーの動力源は何ですか。

【袴田】電気です。バッテリーと、いまは貼っていませんが側面に太陽電池パネルを貼って、そのエネルギーで走ります。

【田原】でも、地球上と月面では、いろいろ条件が違いますね。たとえば月には空気がない。

【袴田】空気がないと対流が起きないので、電子機器やバッテリーが発熱すると熱がこもって使えなくなってしまうおそれがあります。ですから、熱をうまく逃がす工夫をいろいろとしています。

【田原】そもそも月は空気がないから、気温も高いでしょう?

【袴田】昼間は120度で、逆に夜は冷えてマイナス150度になります。将来はそれに耐えられる機体を開発したいですが、今回はまずミッションをクリアすることが最優先なので、明け方のちょうどいい温度環境でローバーを走らせる予定です。