「身内」を大勢生み出す仕掛け

それでは資金調達以外のメリットとは何でしょうか? ひと言で言うならば「開業時の効果的なマーケティング」と表現できます。多くの飲食店では開店当初は集客で苦労をして、オープンから数カ月は赤字を垂れ流すことも珍しくありません。SNSやアナログのDM、チラシなどを駆使しても、来店客が一定数を越えてくるまでにはそれなりの時間を要します。

しかし、クラウドファンディングでそのプロジェクトに興味を持った人、中でも実際に資金を提供した人は、オープン直後からその店を頻繁に訪れてくれます。さらに、資金提供者はその店の開店に自分が「一枚かんだ」ことを誇らしく思う傾向があり、自分の友人知人に勝手に店の紹介をしてくれます。つまり店側からすると、クラウドファンディングによって、親身に店を応援してくれる「身内」を大勢つくることができるのです。これにより、飲食店はこれまでは難しかった「スタートダッシュ」が可能となるわけです。

550万円を集めたクラウドファンディング例

「ローストホース」という馬肉料理専門店も、クラウドファンディングをうまく活用したケースです。元々馬肉に対する並々ならぬ思いと技術を持った方が資金を募ったところ、300万円の募集に対して、500名から550万円を集めることができました。

面白いのは、開店から1年間は資金の出し手しか店を予約できない会員制としたことです。馬肉料理の魅力に加えて、会員制という特別感にひかれた人が次々とプロジェクトに参加し、結果的には多くの潜在顧客を開業前に獲得することができました。この店舗は開店から1年近く経ちますが、結局会員(=資金提供者)の予約だけで常に満席の大繁盛店となっています。