本来、病気になると、休息をとって治そうと努力する。このことをシックロール(病者の役割)と呼ぶ。だが、“シックロールの落とし穴”にハマると、病気になることに意義を感じてしまう。「病気になれば仕事を休める、優しくしてもらえる」という感覚から、精神的な病気につながってしまうのだ。

身体表現性障害の場合、体の症状は悪化しないことがほとんど。体の症状が悪化している場合は医師の診断を受けることは基本だが、症状が悪化していないのに、ドクターショッピングをしてしまうとき、この“落とし穴”を思い出してほしい。日頃から、自分の心の状態を分析し、ストレスを発散したり、言葉で人に自分の気持ちを伝えたりすることは、心の健康を保つためにとても大切なのだ。

西澤宗子
総合診療医。大村病院健診センター長。3人の男の子の母。『診察室からのぞいた子育て』(Kindle版)の著書がある。総合診療とは、「何科に行けばいいかわからない」症状について、“科”にかかわらず全体的に診断する仕事。
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