▼尿がもれる
Aさん(39歳 2児の母)
「スポーツをしたときに尿がもれる。最近はくしゃみだけでももれることがある」
Bさん(37歳 1児の母)
「午前中と夕食後、笑ったり歌ったりしたときに尿もれしてしまって不快だ」

スポーツが大好きなAさんは、33歳のときに娘と縄跳びをしたとき、「あっ」と尿もれに気づき「ショックだった」という。その後、生理用品を使っていたが、テニスクラブでサーブをした瞬間にもれて以来、市販の尿専用のパッドを使用し始めた。ずっと我慢をしていたAさんが私の診察室を訪れたのは39歳のとき。相談の際、「スポーツを楽しめない」と訴えた。

おなかに力が入ったときに、不意に尿がもれる症状は、40歳以上の女性の約4割が経験する。多くの場合は腹圧性尿失禁と言われるもので、出産や肥満で膀胱(ぼうこう)を支える骨盤底筋が弱くなってしまうことが原因だ。

Aさんには骨盤まわりの筋肉を鍛える「ケーゲル体操」を勧めた。肛門と膣を5秒間締め、5秒休める運動を5回繰り返す。これを一日5セット程度行えば、軽い症状なら改善する。台所や電車内などでも人に知られることなくできるので、こまめに体操を続けて、半年後にはパッドが不要になり、今年はテニスを再開。トーナメント戦に向け、ますます練習に励んでいる。

Bさんの場合は、午前中と夜に尿もれすることが多かった。振り返ってみると朝にコーヒーやお茶などのカフェイン入りの飲み物を、夕食にアルコールを飲んだ後に症状が出ることがわかった。Bさんは外出前や出先では、好きなコーヒーやアルコールも控えた。同時に、ケーゲル体操もして症状は改善した。

尿もれは女性にとって、かなりショックな症状だ。よくあることなのに「恥ずかしい」という理由で、誰にも相談できず長い間悩みを抱えたままの人が多い。

Aさんは、33歳のときにも意を決して病院に行ったが、婦人科では「子宮に異常はない」、内科では「膀胱炎はない」と診断されただけで尿もれは改善しなかった。その後はどこに相談したらいいかわからなかったという。

尿もれは相談する診療科がわかりにくいが、最近は女性の尿の症状を相談できる外来である「女性泌尿器科」が増えてきている。数日の入院ですむ手術など、治療の選択肢も増えている。悩んでいる人は相談してみてはどうか。命にかかわる病気ではないが、生活のクオリティーが上がるのは間違いない。

西澤宗子
総合診療医。大村病院健診センター長。3人の男の子の母。『診察室からのぞいた子育て』(Kindle版)の著書がある。総合診療とは、「何科に行けばいいかわからない」症状について、“科”にかかわらず全体的に診断する仕事。