「トップ選手強化」より大切なこと

国内スポーツ産業およびスポーツビジネスを発展させることは、雇用拡大にもつながることになる。間野教授は言う。

「トップ選手の強化より、もっと大事なこともある。トップ強化は時限的な話だし、それ以外のことをもっとやっていく必要があるのです。スポーツ庁というのは、まだ途上であって、将来的なスポーツ省への一里塚です。まずは(スポーツ関係の)司令塔として、学校教育を主としてきた文科省の範疇を広げることをしっかりやることです。オリンピックの終わった後、国民の支持、政府の必要性があれば、いずれスポーツ省に発展していくかもしれません」

確かに東京五輪パラリンピックは大事だが、大会後、スポーツをどうやって発展させていくのか、つまりは市民スポーツのすそ野をどう広げていくのか、ということも忘れてはならない。間野教授が言葉を足す。

「政策目標をつくって、ビシッとPDCAを回していくことが重要になります」

PDCAとは、P(プラン=計画)、D(ドゥ=実行)、C(チェック=評価)、A(アクション=改善)を指す。この4段階を繰り返すことによって、スポーツ庁の機能が効率的になっていくことになるのだ。全ての国民のため。

松瀬 学(まつせ・まなぶ)●ノンフィクションライター。1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書に『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)、『一流コーチのコトバ』(プレジデント社)など多数。2015年4月より、早稲田大学大学院修士課程に在学中。

 

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