【小島】たとえば最近は企業が研修で体験農園をやるケースが増えています。野菜をつくるのは自然相手なので、予測不可能なことばかり。みんなで試行錯誤しながら取り組むことが、チームビルディングに一役買うとか。これも農効果の1つです。

【田原】おもしろい。農園だと、オフィスでの働きぶりとはまた違った面が見られそうですね。

【小島】どんなに人間社会が発展しても生物である以上、人間は食べなければ生きてはいけません。結局、どれも根っこは同じで、農業が「食」と「職」を供給し、「生きる」ことに大きくかかわっています。このことを原点に、事業に取り組み続けていきたいと思っています。

【田原】わかりました。今日はどうもありがとうございました。

田原さんへの質問:いつまでも攻めの姿勢を持ち続けるには?

【田原】僕がいまもなお最前線で仕事をしているのは、好奇心が人一倍強いから。この年齢になっても、自分が知らないことやわからないことに出合うと、わくわくしてしまう。

じつは今回の取材でも、好奇心がうずいたことがありました。小島さんの農園の近くにある自衛隊厚木基地の飛行機が何機も低空飛行していた。このとき「そういうものだ」と訳知り顔で納得したり、「うるさい」と感情的になるだけの人は大成しない。僕は「飛行の規制はどのようになっているのか」「行政はどう対応しているのか」と次々に疑問が湧いてきて、実際に関係者に電話をかけた。そうした好奇心を持ち続けることが、攻めの姿勢につながるはずです。

遺言:訳知り顔をするな! 好奇心を持て!

田原総一朗
1934年滋賀県生まれ。県立彦根東高校卒。早稲田大学文学部を卒業後、岩波映画製作所、テレビ東京を経てフリーに。幅広いメディアで評論活動を展開。
(村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影)
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