将来はアフリカで農業をしたいと夢見た少女時代。大学時代は農作物の卸売会社でアルバイト。農業関連企業への就職を経て起業し、農作物の栽培のほか、ホームレスの就農支援も行う。彼女をそこまで駆り立てる農業の魅力とは?

農作業を通してホームレスを支援

【田原】今回小島さんに会いたいと思ったのは、ご自分で農業をやるだけでなく、農業に関連して他の活動もやってらっしゃるから。農業でホームレスの方の支援をしているそうですが、きっかけを教えてください。

えと菜園代表 小島希世子氏

【小島】私は熊本の田舎の出身なので、上京するまでホームレスの方を見たことがありませんでした。初めて見たときは衝撃的でした。駅で人が寝ていることにも驚きましたが、まわりの人が誰ひとりそれを気に留めることなくすたすた歩いていく。「いったい何が起きてるの?」という感じで、軽くパニックでしたね。

【田原】なるほど。

【小島】なぜ働かずに寝ているのかと不思議に思って同級生たちに尋ねると、答えはまちまちでした。「本人が怠けていたいから」と言う人もいれば、「一生懸命働いていたけど、会社がつぶれたんじゃないか」「あれは資本主義経済の闇だ」と言う人もいて、余計に混乱しました。

【田原】事情は人それぞれでしょうね。

【小島】結局、本人に聞いたほうが早いと思ってホームレスの方に話しかけました。それでわかったのが、ホームレスの方は働きたくても、履歴書に書く住所や電話番号がないということ。ひとまず支援団体の住所を書いても、すぐにバレてダメになるんだそうです。そういう実態を聞いても当時の私にはどうにもできませんでしたが、問題意識として強く残っていました。

【田原】それがのちに農業と結びつくわけですね。

【小島】はい。私たちは一般の方に向けて体験農園をやっていますが、体験農園のお客さんは週末に来るので、平日に世話をする人が必要です。それでホームレスの方にバイトしてもらえば、一石二鳥じゃないかと。

【田原】ホームレスの人にバイト代は出るのですか?

【小島】当初はアルバイト代として払っていました。いまはNPO法人「農スクール」のプログラムの一部になり、そもそもバイトではなくなったのでお金は出していません。