経済的にも精神的にも自由な生活を手に入れるにはどうすればいいのか。農業経営者で山梨県立大学特任教授の水上篤さんは「私が提案し実践するのが『農FIRE』だ。空き家や放棄された農機具を活用すれば生産コストはほとんどかからず、農繁期でも1日2時間程度の労働時間で、年450万円を稼ぐことができる」という――。

※本稿は、水上篤『資金300万円で農FIRE』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

筆者の水上篤さんが営む農業生産法人hototoのスタッフ
筆者提供
筆者の水上篤さんが営む農業生産法人hototoのスタッフ

農業でFIREを目指そう

FIREとは、若いうちに資産を作ってリタイアし、あとは資産運用をしながら悠々自適に暮らすこと。

ですが、私が提案し実践する「農FIRE」とは、資産運用だけで暮らす生き方ではなく、「農業」を起点にして衣食住エネルギーを自分で生み出し、お金では買うことのできない土地の恵み、人々とのつながりなどたくさんの豊かさを享受できる状態です。

しかし、農業は大変な割りに儲からないと思っている人は多いのではないでしょうか。農業が大変なのは生産に手間がかかるからで、儲からないのは流通コストがかかるからです。しかし現在では楽な生産手段が出てきていますし、流通コストに関しては、今は直販する方法がいくらでもあるので簡単に抑えられるようになりました。さらに農作物をそのまま売るのではなく、加工することで付加価値を付けることもできます。他にも無農薬にするなど、付加価値を付ける方法がいくらでもあるのです。

あとはこれが王道だと思いますが、高く売れる商品を作ることです。シャインマスカットやブルーベリー、あるいは高級イチゴなどが代表格です。シャインマスカットで言えば、1反(300坪=991.736m2)の農地で年間150万円の売上が出ます。3反の土地があれば450万円です。そこから経費を引いて手元に残るお金は、その50%です。3反で225万円の現金が残ります。一人でできる面積(たまにパートタイマーに手伝ってもらう)は5反が限界かと思いますので、1反75万円の利益×5反で375万円が手元に残ります。そこから、加工品や付加価値を少し付けるだけでも450万円ぐらい得ることはできます。

しかもブドウを育てている私の場合、労働時間は農繁期でも1日2時間程度です。

年4%の運用益で450万円得ようと思ったら、1億1250万円の元手が必要です。いかに農業のコスパが良いかわかるでしょう。