外見を「邪視」してはいけない

奥さんや恋人をあまりほめるなという警告もその延長線上にある。

つまり、「美人だね」とほめると、嫉妬していると誤解される危険性があるからだ。まさか、「じゃ、あげるよ!」と妻をプレゼントしてくれることはないにしても、大小のわだかまりを残す可能性はある。

トルコをはじめとした中近東の雑貨屋をのぞくと、『ナザール・ボンジュウ』というお守りが売られている。青いガラスの中に白、水色、青色の着色で目玉が描かれたもので、観光客のお土産品の定番だ。

これは邪視から災いをはねのけるというお守りであり、イスラムの人々はこのお守りを軒下に吊るし、あるいはポケットにしのばせている。それほど「邪視」を恐れているということだ。

妻や恋人をほめたいのなら、「敬虔なイスラム教徒だね」、「やさしい女性だね」などと、あくまでも内面をほめること。間違っても、美人だ、スタイルがいいなどと、その外見に触れないほうが無難だ。

※本連載は書籍『面と向かっては聞きにくい イスラム教徒への99の大疑問』(佐々木 良昭 著)からの抜粋です。

佐々木 良昭ささき・よしあき)●笹川平和財団特別研究員。日本経済団体連合会21世紀政策研究所ビジティング・アナリスト。1947年、岩手県生まれ。19歳でイスラム教に入信。拓殖大学卒業後、国立リビア大学神学部、埼玉大学大学院経済科学科を修了。トルクメニスタン・インターナショナル大学にて名誉博士号を授与。1970年の大阪万国博覧会ではアブダビ政府館の副館長を務めた。アラブ・データセンター・ベイルート駐在代表、アルカバス紙(クウェート)東京特派員、在日リビア大使館渉外担当、拓殖大学海外事情研究所教授を経て、2002年より東京財団シニアリサーチフェロー。2014年からは経団連21世紀政策研究所ビジティング・アナリストに就任。
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