心理的免疫システムで、幸せを脳内でつくる

「あの仕事についていたら」「あのとき、こうしていれば」……。

ふと、そんなことを考えた経験は、誰もがお持ちではないだろうか。今にさしたる不満があるわけではないけれど、もしかしたら違う人生もあったのではないか――。

私たちが“ありえた選択肢”に見い出しがちなのは、選ばなかった未来に対する過大評価。あちらを選んでいたなら、もしかすると……という思いだ。ところが、待ち望んだものが本当に手に入ったときには、そこまで喜びを感じなかった、というのも現実だろう。

ハーバード大学の社会心理学部の教授ダン・ギルバート博士がTEDで「幸せの法則」についてこんなことを語っている。それは、人間には心理的免疫システムがあり、予想通りにいかないときほど、この力が強く表れるというもの。つまり、負け惜しみや強がりではなく、無意識のうちに自分の選択を肯定して、世界をよく感じられるように脳内で合成するのである。これこそが、「幸せに生きるカギ」だという。

幸せは、自然発生的なものと人工的なものの2種類にわけられる。たとえば、たまたまお金が儲かり幸せだと感じる人もいれば、お金を失ったけれども大切なことを学んだから幸せだと感じる人もいる。後者のような自らの内面でつくり上げる幸福は偽りにも思えそうながら、実際には前者と後者の“幸せの大きさは変わらない”というのだ。

ではここで、「人工的に幸福をつくりあげる実験データ」を見てみよう。