染色加工にITを取り入れる

アナログ世界の典型とも言える繊維産業にIT技術を取り入れようと、1988年、経営戦略の一つに「IT化」を掲げました。まず取り組んだのが、IT技術を使った染料の組み合わせです。セーレンのコアコンピタンスである染色加工に、ITを取り入れようというわけです。

さまざまな染料の組み合わせによる色の出具合や、調合にかかるコストをコンピュータ上で試しながら、データを蓄積していきました。色は3原色の組み合わせでつくられるため、アナログでは20色程度しかつくれませんが、デジタルでは1677万色もの組み合わせが可能です。ただ、これらの膨大な数の組み合わせは技術的に可能だというだけで、モノづくりに生かそうという発想が現場にはありませんでした。

そこで、自分たちの基礎技術の積み重ねをモノづくりに生かそうと、デジタルデータを繊維製品に忠実に表現するための技術開発に着手したのです。この技術開発が、セーレンの未来を担う当社独自のデジタルプロダクションシステム「ビスコテックス」を生み出すきっかけとなりました。

ビスコテックス展示会の様子
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ビスコテックスは、繊維産業の生産手法を180度変える、「手法革命」とも言えるものです。従来の染色加工は、染料を溶かして入れた大きな釜に、1ロット400~500メートルもの布地を丸ごと入れて染めるという大量生産が基本でした。また、柄入れの際には、一色ごとにスクリーン版(型)をつくり、一色毎に刷り込んでいたものです。それに対して、ビスコテックスは、インクジェットの要領で布地へのデジタル染色が可能であり、小ロットで必要な量だけ染めることができます。

これまでは「いいものを大量に安くつくる」という工業的なモノづくりが主流でしたが、人々の好みや趣向が多様化する現代において、このようなやり方では無駄が生じるのは明白です。いまでさえ、生産した服のうち60%が売れれば大成功と言われているほどで、残り40%は売れない前提で作られている状況です。将来は世界人口がさらに増加し、資源不足が懸念されるなか、40%ものロスを生み出すモノづくりが受け入れられるはずがありません。

私たちが目指すのは、従来の大量計画生産から、少量オンデマンド生産への転換です。欲しいものを、欲しい時に、欲しいだけ提供する。少量オンデマンド生産によって省資源、省エネ、在庫レスを実現し、ファッション流通に変革を起こすことが狙いでした。