2015年1月23日(金)

「コスプレ男子内定」の真相 ~ナルシスト採用参加企業に聞く(前編)

“マネジメント”からの逃走 第17回

PRESIDENT Online スペシャル

著者
若新 雄純 わかしん・ゆうじゅん
人材・組織開発プロデューサー/慶應義塾大学特任講師

若新 雄純福井県若狭町生まれ。慶應義塾大学大学院修士課程(政策・メディア)修了。専門は産業・組織心理学とコミュニケーション論。全員がニートで取締役の「NEET株式会社」や女子高生がまちづくりを担う「鯖江市役所JK課」など、多様な働き方や組織のあり方を模索・提案する実験的プロジェクトを多数企画・実施中。著書に『創造的脱力』(光文社新書)がある。
若新ワールド
http://wakashin.com/

執筆記事一覧

齋藤和政、若新雄純=談、前田はるみ=聞き手、構成
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自意識過剰な若者だけを集めたマニアックな就職サービス「ナルシスト採用」。その第一号内定者に決まったのは、女装コスプレが趣味だという男子学生だった。内定を決めたITベンチャーのソノリテ・齋藤和政社長に、企画者である若新氏がその真相を直撃。巷に溢れる一般的な採用サービスへの違和感や、採用活動のあるべき姿についても語り合った。

内定の決め手は、フィーリング

【若新】「就活アウトロー採用(http://outlaw.so/)」でもたくさんの内定を出されましたが、ナルシスト採用(http://narcissist.so/)では、女装のコスプレが趣味の男子学生に内定を出されましたね。ツイッターでは、本人のつぶやきが5,000回以上リツイートされて、すごく話題になりました(https://twitter.com/eluu0/status/519464290852429825)。採用の決め手は何だったのですか? もしかして、齋藤さんもコスプレ好きとか?

【齋藤】違いますよ(笑)。フィーリングです。参加者とのセッションには、当社から僕も含めて3人が参加していました。僕がトイレから戻ってくると、うちの社員とその彼がすごくいい感じで盛り上がっていたんです。社員の一人がたまたまコスプレ好きで。その社員が「内定でいいですよね?」と聞くから、「いいですよ」って。自然に決まりました。  

【若新】そうだったんですね。

【齋藤】ただ、それには伏線があります。以前、参加者を集めた説明会でも彼のことを見かけていたんです。髪が腰まで届くほど長くて、声が高い。人と違う感じがいいなと思って。社員とも気が合ってるのを見て、これでいいんだと腑に落ちました。

【若新】フィーリングって大事ですよね。人と人が意気投合するときは、恋愛もそうですが、主観的で直感的なものだと思うんです。就職でもそれが自然だと思うんですが、実際にはみんな客観的になろうとする。「当社はこういう会社で、こんな人材を求めています」とか、「自分は学生時代こんな経験をしました」とか。そんな断片的な情報を交換し合ってマッチングしようとしても、限界がありますよね。

ナルシスト採用に参加していた学生も言っていましたが、「僕らはいくら自分たちのことを客観的に語ろうとしても、新卒である僕らの客観的価値は、若いことと、上司や会社の言いなりになることくらいしかない」と。彼らは、就活の場でもっと主観的になって、感じ合いたいんですよ。理屈を伝え合うのではなくて。齋藤さんがおっしゃったように、「いいな」と思う人と出会ったときには、「いいな」という感覚に自然となるものです。そういった感覚をもっとシンプルに感じ合える場になれば、企業と応募者の健全な出会いが増えるはずなんですけどね。

【齋藤】内定を出した後、コスプレ趣味の彼が「髪を切らなくてもいいですか?」と僕に聞いてきました。そんな質問をさせてしまうこと自体、とても申し訳なくて。男性なのに髪が長いから、普通の就活は無理だと彼もわかっていたんでしょうね。

【若新】彼は内定をもらったことが相当うれしかったらしく、ツイッターでつぶやいていましたね。「髪を切らなくていいと言ってくれたので、僕はこの会社で働きます」って。齋藤さんとしっかりエンゲージできたということです。

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