いい意味でのあつれき

若新雄純(わかしん・ゆうじゅん)
人材・組織コンサルタント/慶應義塾大学特任助教
福井県若狭町生まれ。慶應義塾大学大学院修士課程(政策・メディア)修了。専門は産業・組織心理学とコミュニケーション論。全員がニートで取締役の「NEET株式会社」や女子高生が自治体改革を担う「鯖江市役所JK課」、週休4日で月収15万円の「ゆるい就職」など、新しい働き方や組織づくりを模索・提案する実験的プロジェクトを多数企画・実施し、さまざまな企業の人材・組織開発コンサルティングなども行う。
若新ワールド
http://wakashin.com/

【若新】齋藤さんと初めてお会いしたのは、2012年のデコボコラボ(現在のアウトロー採用)でしたね。改めてうかがいますが、なぜ僕たちのプログラムに参加しようと思ったのですか?

【齋藤】ソノリテは設立5年のIT会社で、主にクライアントへのSE派遣を行っています。3年前に僕が社長を引き継ぎました。当時は社員が10名にも満たない会社で、採用をどうしようか悩んでいたんです。一般的な採用ナビに出稿しても埋もれてしまうだろうし、こんな零細企業が「私たちはこんなIT企業です」と言っても、誰も見向きもしないだろうなと。それに、私も割と大きな企業を辞めてこの会社の社長になったので、面白いことをやりたかった。

そんなとき、ツイッターでデコボコラボを知りました。儀礼的な就活ではない新しい就活サービスを始めるという説明を聞いて、「探していたのはこれだ!」と飛びつきました。

【若新】プログラムを提供し始めた当初は、この取り組み自体がマニアックだったようで、企業の採用担当者に理解してもらうのに時間がかかりました。採用に至っても、「やっぱりイメージと違った」と言われたこともあります。そのようななか、齋藤さんが僕たちのプログラムに興味を持ってくれて、前向きに取り組んでくれたのはとてもうれしかった。

反面、齋藤さんが誰も採用できなかったらどうしよう、と不安もありました。でもその心配は杞憂でしたね。企業と参加者が対話すればするほど、いい結果が生まれることを、齋藤さんたちが証明してくれました。

【齋藤】デコボコラボでは9人採用、その後の就活アウトロー採用・ナルシスト採用では、2015年1月現在で2名採用、3名に内定を出しています。まだ対話を続けている参加者もいて、おそらくあと2~5名は当社で採用すると思います。

【若新】そんな勢いで採用していると、オフィスがすぐ手狭になってしまいますね。

【齋藤】拡大志向でどんどん増やしていきたいと思っています。現在は社員数40名ほどですが、いずれ100名を超えたいですね。

【若新】40人のうち10名以上となると、一大派閥ですね。社内で変化はありましたか?

【齋藤】新しい社員と既存の社員との間で、いい意味でのあつれきが生まれています。まさに狙いどおりです。アウトロー採用で入社する人たちに期待するのは、彼らが会社に与える刺激や影響です。それが破壊的であればあるほどうれしいし、意味があると思っています。普通の就活に違和感を持っていた彼らが、既存の社員にどんな刺激を与えてくれるのか。また既存の社員も、自分の常識とは異なる彼らの感覚に触れてどう感じるのか。とても興味があります。

もし、両者が衝突することでネガティブな方向に行きそうになっても、それをプラスの方向へ軌道修正するのがマネジメントの仕事です。何も起こらないのが、一番つまらないですからね。(次回へつづく)

(前田はるみ=聞き手、構成)
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