1.顧客は何を高く評価するか?

これは「一番重要な問いかもしれない」と、ドラッカーは言った。「それなのに、発せられることが最も少ない問いだ」。この洞察は、顧客がかつてないほど大きな力と多くの選択肢を持っている時代には、とくに意味がある。顧客が何を求め、何を必要としているかを見つけ出すためのたゆみない探求に乗り出さなければ、あなたの組織はすぐに置いてけぼりをくらうだろう。それを行う唯一の方法は「外に出て観察し、質問し、耳を傾けること」だと、ドラッカーは言った。

2.われわれの事業は何であり、何であるべきか?

「会社の事業とは何かを知ることほど簡単でわかりきったことはないと思われるかもしれない」と、ドラッカーは『マネジメント――基本と原則』で指摘した。それなのに「正しい答えは通常決して明らかではない」。市場の構造が驚異的なペースで変化し、技術の進歩によって新しい地平が絶え間なく開けている時代には、これはとくに言えることかもしれない。アマゾンが大成功を収めている理由の一つは、わが社の事業は何かという理解を絶えず磨いていることだと私は思う。それを行うためには並々ならぬ規律が必要であるにもかかわらずだ。なぜそれが必要なのかというと、真剣に考えれば、「この問いは論争や討議や意見の不一致を生じさせる」からだと、ドラッカーは指摘した。「この問いには判断および相当な勇気を必要とする。答えが『みんなの知っていること』と同一線上にあることはめったにない。……答えは急いで出すべきではない。また、痛みをともなわずに出せるものではない」。

3.仕事とは何か?

50年代のブルーカラー労働者には誰もこの問いを投げかけはしなかっただろう。「肉体労働では、仕事はつねに与えられるもの」だからだとドラッカーは述べた。自動車が組み立てラインを流れてくると誰かがフェンダーをボルトで留めるわけだ。だが、知識労働が優勢な今日では、仕事を定義するのははるかに難しいことがある。知識労働者の場合、任務に対処する所定の方法は一般に存在しない。

知識労働者は一般に、どのような手段をとるかとらないかや、それらをどのような順番で使うかについて極めて大きな裁量権を持っている。「作業生産物」が労働者の手から生まれるものではなく頭の中にあるものの場合、生産高さえ曖昧なことがある。知識労働者の生産性を向上させる方法は下から生まれると、ドラッカーは言った。「知識労働者自身に、『あなたの仕事は何か?』『それは何であるべきか?』『あなたはどのような貢献をすることを期待されるべきか?』『あなたが自分の仕事をするうえで邪魔になり、除去されるべきものは何か?』と問いかけることから」生まれるのだと。