デザインした人 加藤芳夫氏(サントリー クリエイティブディレクター)

デザインは人間の生活とともにあります。食べ物や飲み物のパッケージについていえば、生活の不満を解消するデザインでなければなりません。

ここで質問です。みなさんがジュースやコーヒーではなく、ミネラルウオーターを飲みたくなるのはどんなシーンでしょう。多くの人は、ただ純粋に喉の渇きを満たしたいときと答えるのではないでしょうか。

喉が渇くというのは人間の自然な、生理的な欲求です。そんなときに、「この水にはこんな成分が含まれている」などという薀蓄は消費者に響きません。「サントリー天然水」は機能面を強調しすぎず、自然を感じさせるようなものにデザインしました。山のイラストをラベルに描いているのもそのためです。

イメージを補足するための言葉として、「天然水」という3文字を選びました。今でこそ天然水という言葉は一般的に使われていますが、それまでは「名水」という表現しかなかったのです。1991年の発売時から、名称もデザインも少しずつリニューアルを重ねているのですが、天然水という言葉は一貫して使い続けています。

ペットボトルそのものの形でも、自然のみずみずしさを表現しています。ボトル上部を覆っている氷のような模様は、単なる水ではなく冷たい雪解け水であることを表しています。ボトル下部の捻れた波線は、何も模様のない状態では見えない透明の水が動いて見えるような効果を狙いました。動きがあるということは、命があるということ。中身の水にも生きた印象、つまり人工的なものではなく天然のものであるという印象を与えたいと考えたのです。