将来の不測な事態への対処は、決してお金があれば充分というわけではないが、「保険に入れば、その不安は解消できる」という話に単純化して、相手を納得させるこうした営業手法は、多くの業態で繰り広げられている。

複雑な物事を単純な形の公式にしてしまうことは、会社として売り上げを伸ばすためにも必須な考え方だ。よく売り上げの伸びる部門と、そうでないところは、販売方法を誰しもが応用できるような、シンプルなマニュアル化ができているか否かの違いがある。それさえできていれば、成功の再現が簡単にできて、売り上げを伸ばせるというわけだ。

実際に、霊感商法でも「先祖の因縁があり、それが人生をダメにしているので、それを取り払うための開運グッズを買えば救われる」というシンプルな解決策を公式化にしたために、勧誘をする人に話術の力量があろうとなかろうと関係なく、このパターンを利用して、速やかにターゲットに高額商品を売りつけることができたのである。

近年、ネットやテレビなどの媒体を通じた通信販売は大きな利益をあげているが、ここでも、シンプルなマニュアル化が図られて、売り上げを大きくあげている。

まずネットやテレビなどで商品の宣伝をし、応募してきた消費者に無料、あるいは格安で商品を提供する。そして、消費者が商品を使い終わったころに、再び電話をかけ、商品を使用した感想を聞く。そこで反応のよかった人には、セット販売を持ち掛けて、商品のリピーターにしていく。

もしリピーターにならなかったとしても、客には、別の商品のパンフレットを送り、関心があれば、注文してもらうようにする。さらに、この注文を受けたり、販売を促すなどするテレホンオペレーターにも、顧客別の対応マニュアルが徹底されているため、どんな人にでも間違いのない対応を図れることになる。

組織でも、個人でも、シンプルな形での勝利の方程式をどれだけもっているかが、成功の鍵になるのだ。

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