ロングドライブでの走りを体感

高速巡航はもともとドイツのメーカーの最も得意とする分野とされているが、320 M Sportもクルーズ時のフィーリングは非常に良い物を持ち合わせていた。ロードノイズは低く、また老朽化で舗装が割れたり波打ったりしている路線でも快適性はしっかり保たれていた。路面を舐めるようなスムーズな乗り心地という点では、フォルクスワーゲンの第7世代「ゴルフ」の1.4リットルモデルなど、もっといいクルマも存在するが、Mスポーツサスペンション装備ということを考慮すれば、十分に納得のいくレベルであった。100km/h巡航時のエンジン回転数はトップギアにあたる8速で約1500rpmで、市街地では少々騒々しく感じられたパワートレインからのノイズはほとんど意識しないレベルに落ち着く。

次にワインディングロード。320dのテストドライブでは東京を起点とし、軽井沢、万座、吾妻渓谷を周遊する575kmのコースをたどったが、320d M Sportが最も生き生きとしていたのは軽井沢~吾妻渓谷のワインディングロードであった。旧軽井沢から鬼押出し方面へと抜ける林間道路の白糸ハイランドウェイはタイトなコーナーが続き、路面も老朽化でひび割れだらけというルートだが、320dのMスポーツサスペンションは動きが大変にしなやかで、荒れた道でもタイヤを路面にぴったりと食いつかせるのだ。

また、長時間運転で印象的だったのは、シート設計の良さ。Mスポーツにはアルカンターラというスエード調の人工皮革を用いたスポーツシートが装備されている。着座したときの感触はかなり硬質で、クッション幅も小さく感じられる。ドライブ開始時は、果たしてこれで疲労の原因になる路面からの衝撃をしっかり遮断できるのかと一抹の不安を覚えたが、長時間連続で運転しても身体の疲れは驚くほど少なかった。

ディーゼルというと燃費が気になるところだが、スコアは非常に良好であった。過度なエコランにはこだわらず、幹線道路では無駄を排したスムーズな運転、長いワインディングでは楽しさを味わうというパターンで575.9kmを走った結果、給油量は合計29.7リットル。燃費は19.4km/リットルとなった。瞬間燃費計の動きから、高速道路主体で走れば、20km/リットルは余裕で超えることができるものと思われる。

使用燃料が軽油であるため燃料代は安く、消費税が8%にアップした後であるにもかかわらず、4000円未満であった。ガソリンモデルがハイオク仕様であることから、燃費と燃料単価の双方で大きなメリットが感じられた。ちなみにBMWジャパンによれば、燃料代の安さはカスタマーがディーゼルを選ぶ動機として非常に大きなウェイトを占めているという。