稼働率が40%に落ちても利益が出る体制を構築した、タイのバンポー工場。

もう一つの柱は「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)」と呼ばれる「設計革命」だ。開発や生産技術のエンジニアが仕事の進め方をゼロから見直すことに取り組んでおり、「仕事革命」でもある。この取り組みは、トヨタが完全復活し、その後も持続的に健全な成長を遂げていくために必要な戦略とも言える。

TNGAではまず、トヨタの総生産台数の50%に相当する前輪駆動(FF)系プラットホームから設計革新に取り組む。「ヴィッツ」「プリウス」「カムリ」の3つのプラットホームに集約し、この3つをベースに複数の車種を開発し、部品や構造(レイアウト)の共通化などを進める。その第一弾は15年発売予定の4代目「プリウス」となる見込みだ。

TNGAの取り組みで大きなポイントとなるのは、デザイン・設計の源流段階から10年程度先までの商品を同時開発し、一気に共通化を進めていくことである。そして、デザインや設計を大きく変えても、製造現場がこれに対応できなければ「絵に描いた餅」に終わってしまうため、デザイン、開発、生産、調達といった各機能が源流段階から同時に車造りに取り組む。非常にコンカレントな取り組みであることが特徴の一つだ。こうした仕事の進め方を加速させようと、トヨタは今春、開発と生産技術が同居して大部屋方式で車造りに取り組む開発棟を建設した。

また、これまでのトヨタの開発スタイルは、プラットホームを共有化していながらも、車種ごとにチーフエンジニア(CE)が存在しているために、搭載する部品は個別に設計したり、後発車種では設計を大幅に見直したりするなど、個別最適の設計をしているのが実態だった。これを見直してプラットホームが同じであれば、部品や構造(レイアウト)を徹底して共通化する。たとえば、同じプラットホームでも、エンジンルーム内のレイアウトは違うケースがあったが、今後は統一化していく。これにより部品や取り付け作業の共通化も進み、効率性が増すことになる。

車種ごとにいたCEは、車種群担当のCEとして大括りにして、車種群の開発に責任を持たせる。さらにCEは個別の車種開発が終われば人事異動で交代していたが、こうした習慣も改め、CEが継続的に商品群を改良していく仕事の進め方を導入する。長期的視点で商品開発に取り組み、部品や構造の共通化の推進を確実にしていくための組織改正である。

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