中小企業は攻め続けるしかない“クレイジー”なアイデアの根拠

森岡 毅(もりおか・つよし)
1972年生まれ。神戸大学経営学部卒。96年、P&G入社。日本ヴィダルサスーン、北米パンテーンのブランドマネージャー、ウエラジャパン副代表などを経て、2010年ユー・エス・ジェイ入社。12年より同社、チーフ・マーケティング・オフィサー、執行役員、本部長。著書に『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』(角川書店)。

「オープンすれば、日本中どころかアジアや世界からもハリー・ポッターファンが訪れ、必ずや投資以上の利益をもたらすでしょう」

この7月、巨額投資したハリー・ポッターの新エリア「The Wizarding World of Harry Potter」がオープンすると発表したUSJ。CMO、森岡毅は鼻息荒く語る。

しかし、である。誤解されがちなところであるが、現在のUSJはアメリカのユニバーサル社とは一切資本関係がない日本の単一企業だ。年間売上が800億円程度の企業が一つのアトラクションエリアに450億円もの投資をするのは、勇気どころか無謀と言ってもいいだろう。

しかも、森岡がこのアイデアを社内で発表したのは、彼が2010年に入社してから、わずか2カ月しかたっていない時期だった。

「当然、CEOのグレン(・ガンペル)は『私の死体を越えて行け!』と大反対でしたし、それ以外の経営幹部もほぼ全員が反対して、私のことを『クレイジーだ』と言いました。しかし、私はマーケティングのプロとして『今この球を打たなければ、将来的にもっと難しい球を打たなくてはならなくなる』ということだけはわかっていました。ビジネスとして正しい選択なのだから、説得するしかありません」(同)

お前は狂っている、どうしても実行したいなら私を殺してからにしろ。そんな罵られ方をしたら、ふつう、引き下がってしまうに違いない。だが、森岡はひるまなかった。むしろ、アドレナリンが湧き上がったとでもいうように前へ前へと突き進む。