投資は毎年45億円より一度に450億円のほうが効率的だ

「ビジネスとして正しい選択だ」と言い切るには、それだけの理由がある。

第一に森岡が信じていたのは、ハリー・ポッターのブランド力の強さである。日本の中だけでみても、ベストセラー書籍のうち4冊はハリー・ポッターが占めている。また、映画館でハリー・ポッターシリーズを観た人は累計約7800万人。これは、『インディ・ジョーンズ』も『スター・ウォーズ』も、ジブリ作品でさえもかなわない圧倒的な数字だ。

「すぐに経年劣化してしまう中途半端な映画ブランド10個に毎年45億円ずつ投資するよりは、数年に一度、絶対に人気の衰えない強力なブランドに450億円投資したほうがよほど効率的です。私自身、USJに携わる前からのハリー・ポッターファンで、家にはシリーズすべての本とDVDがあります。そのため、マーケターとしてだけでなく、1ファンの感覚値としてもブランド力には自信がありました。このレベルのブランドを使って集客施設を作れるチャンスは二度とない。これを逃したら、自分が生まれた意味がないとさえ思いました」(同)

森岡が「正しい選択」と言い切った背景には、アメリカの「ユニバーサル・オーランド・リゾート」に、すでにオープンしていた「The Wizarding World of Harry Potter」の存在もある。これにより、品質を確かめたうえで意思決定ができるうえ、実際にプロジェクトが動き出せば、最新技術を投入してより良い物を作り、コストとスケジュールの管理を行うことで、経営上のリスク軽減もはかれるのである。

そして最後のもっとも大きな理由は、「USJの体力を考えれば今しかない」という危機感だ。日本は少子高齢の人口減少マーケットであり、さらに、全体の6~7割を関西に依存したUSJの集客体制を放っておけば、将来的に来場者数が減っていくのは目に見えている。

「結局のところ、中小企業が生き残るには攻め続けるしかないのです。この傾向は、様々な企業の過去のデータからも明らか。攻めて勝ち続けることでより高く跳ぶか、現状維持を目指してジリ貧に陥り落下するか。業界トップでもない中小企業には、安定飛行などあり得ないということを誰もが肝に銘じなくてはいけません」(同)