【田原】ソニーでは「他社と差別化しろ」と盛んに言われたけど、森川さんは「差別化がむしろマイナスになる」と考えていたそうですね。これはどういうことですか。

【森川】差別化って模倣されるのでとても難しくて、結局、「ほかにない技術」ということになってしまいます。その技術が求められてなくても、とにかくそれを使って商品をつくれというのが差別化になり、そこには「人がまず何を欲しがっているのか」という発想がなくなってしまうんですよね。たとえば当時、デジタルウォークマンという製品があったのですが、まず技術ありきなので、ある特定のセキュリティ技術を使わないと音楽がコピーできませんでした。それがみんなに求められていたのかというと、疑問です。

【田原】でも、かつてはソニーも魅力的な商品を出していました。どこが変わってしまったんだろう?

【森川】商品開発には2つの方向があります。一つはグーグルさんのように、人が欲しがるのかわからないけど、エンジニアがおもしろがってつくったものをとにかく世に出して、その中で当たったものをビジネス化していくやり方。もう一つはアップルさんのように、人が求めるものを突き詰めて考えて、1個に絞って出すやり方です。たぶん昔のソニーは、その両方を持っていました。エンジニアがおもしろがってつくり、最後は社長がユーザーの目線から厳しくチェックして、ダメなものは踏みつけたり壁にぶつけて壊しちゃうような文化があったんです。でも、何で変わってしまったのかというのは、ちょっとわからないです。

目指したのは「スマホの水」

【田原】森川さんは2003年にソニーからハンゲームジャパンに移りました。ハンゲームは、その名の通りゲームの会社ですね。DeNAやグリーとは、どこが違うのですか?

【森川】当時、DeNAさんやグリーさんはソーシャルゲームをやっていなくて、世界的には僕たちが走りでした。

【田原】だけど、結局は後発の彼らのほうが伸びた。森川さんのところは、どうしてうまくいかなかったの?

【森川】PCでやるゲームをガラケー(従来型の携帯電話)に置き換えようとしたのが失敗でした。