日本ではまだ珍しい木造住宅の屋上庭園を手がける会社がある。株式会社innovation。岡崎富夢社長が、「住宅業界にイノベーションを起こしたい」という思いで名づけた社名だ。岡崎氏は、自社の屋上庭園を“住宅業界のiPhone”と位置づける。その意味するところは何なのか。田原氏が思いを聞いた。

魚がいない釣り堀ではMBAも役に立たない

岡崎富夢氏

【田原】そのあとに木造住宅の屋上庭園を手がけるのですね。きっかけは何だったのですか。

【岡崎】2008年のリーマンショックの影響で、翌年はマンションが建たなくなりました。断熱材や屋上庭園はビルが建ってはじめて組み込まれる商品なので、マンションが建たないとどうにもならない。そんなときに事業本部長に抜擢されたのですが、魚のいない釣り堀に釣り糸を垂れているようなもので、手も足も出ませんでした。

【田原】釣り堀に魚がいなくなると、MBAは役に立たない?

【岡崎】釣り堀に魚がいるときに他社と取り合って勝つやり方は、MBAで学べます。でも、そもそも魚がいないときにどうするのかということは教えてもらえませんでした。

【田原】売り上げはどれくらい減った?

【岡崎】うちは50年間1回も赤字を出したことがないのですが、09年は利益が2000万円。この数字は、みんなにお願いして年収を50万円下げてもらい、なんとかつくった数字です。

僕に役員保険がかかっていたので、自殺すればなんとかなると考えてしまうくらいに追い込まれていました。木造住宅の屋上庭園と出合ったのは、そのころです。ある社員が木造一戸建てに断熱材を売りにいったとき、お客さんから「おたくはビルの屋上庭園をやっているよね。木造住宅でもできるかな」と声をかけられたんです。その報告を聞いて、これだと。