【田原】でも500万円じゃ売れないから、最初に聞いたような工夫で100万円にしたわけだ。よくできたね。

【岡崎】10年は30~40人くらい早期退職してもらわないと利益が出ないところまで追いつめられていたので、もう必死です。100万円で売るためのプロジェクトを立ち上げて、社内にある知恵をかき集め、なんとか3カ月で実現しました。

【田原】そこで聞きたい。いま聞くと、相当に強引なやりかたをしている。強引にやれば、普通は社員から不満が出る。社員のモチベーションを下げないようにするには、どうするの?

【岡崎】やっぱりビジョンを語ることでしょうか。この事業で会社を変える、さらに住宅業界を変えるというビジョンを語り、リーダーがそれを本気で目指していることが伝わると、仲間も集まります。

【田原】みんなで夢を分かち合いたいって、ブラック企業の経営者はだいたいそう言うんですよ。たしかに結果が出ればいいけど、結果が出ないと不満がたまってくる。結果が出るまで、どれぐらいかかったの?

【岡崎】1年半です。軌道に乗って、子会社になりました。

【田原】それまでどうやって、みんなのモチベーションを維持したの?

【岡崎】徹底して話し合います。社員が不満に思うのは、ほとんどの場合、情報が入ってこないからです。だから「僕はこう思っている」ということを、本当にわかってもらうまで話をする。

【田原】親会社の社長のほうはどうでしたか。岡崎さんに任せるのは、相当に信頼している証拠だよね。

【岡崎】うちの社長は、「年寄りが若い人間の可能性を潰したらいかん。おまえらがやることをバックアップするのが俺の仕事だ」とよく言います。だからチャレンジは積極的にさせてくれる。

【田原】いまの話を聞くと、ホンダとそっくりだ。40歳以上は成功体験があって保守的になるから、アイデアも保守的になる。だから若い連中のアイデアが理解できなくても、目を輝かせて3回同じことを言ってきたら騙されてやれ、というのがホンダなの。

【岡崎】うちもそんな感じです。