「ガリガリ君」が小ネタを続ける理由

分野は何であれ、何か物事を成し遂げた人に共通するのは、Stickyだということである。Stickyとは「粘着性の高い」「ねばねばする」という意味だが、要は「しぶとい」「しつこい」ことである。

STAP細胞に関する大発見で一躍時の人となった理化学研究所の小保方晴子さんは、朝日新聞のインタビューにこう答えている。

「やめてやると思った日も、泣き明かした夜も数知れないですが、今日1日、明日1日だけ頑張ろうと思ってやっていたら、5年が過ぎていました」。

権威ある科学誌に論文を投稿したものの、掲載は却下され、審査員からは「細胞生物学の歴史を愚弄している」とまで言われた。それでも諦めず、自分の信じるところに執着したからこそ生まれた大発見だった。

小保方さんの話を知り、以前お話を伺った赤城乳業マーケティング部次長の萩原史雄さんのことを思い出した。赤城乳業は「ガリガリ君」で知られるアイス専業メーカー。萩原さんはその「ガリガリ君」の販売促進の責任者であり、仕掛け人である。

今や国民的アイスとなった「ガリガリ君」だが、その販促手法は実に地味である。お金をかけて、大々的に広告宣伝を仕掛けたり、全国キャンペーンを行うということはほとんどしない。

「ガリガリ君」の販促の柱は「小ネタ」である。ちょっとした話題になりそうな小ネタを消費者の生活シーンにたくさん仕込み、そこから口コミで噂を広げていく。派手な空中戦ではなく、地道なゲリラ戦が「ガリガリ君」マーケティングの真骨頂である。

なかには、萩原さん自身が「くだらない」というような小ネタも数多くある。しかし、萩原さんは長年この小ネタに執着し、Stickyに取り組んできた。