2014年2月19日(水)

正社員が簡単にクビになる日はくるか

しごとの未来地図

PRESIDENT 2014年3月3日号

著者
鶴 光太郎 つる・こうたろう
慶應義塾大学大学院 商学研究科教授

鶴 光太郎1960年生まれ。東京大学理学部数学科卒業。オックスフォード大学Ph.D.(経済学)。経済企画庁、OECD経済局エコノミスト、経済産業研究所上席研究員などを経て、2012年4月より現職。安倍政権の規制改革会議・雇用ワーキンググループ座長を務める。

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慶應義塾大学大学院 商学研究科教授 鶴 光太郎 構成=宮内 健 写真=Getty Images
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写真=Getty Images

昨年、多くのメディアで解雇規制緩和の話題が取り上げられました。「解雇特区」という言葉も飛び出しましたが、10月には安倍政権が規制緩和を事実上断念したという記事も現れ、以降、報道するメディアは激減しています。

実はこの議論、まだ続いています。正社員の解雇はどうなるのか。どうあるべきか。今回はこのテーマについて考えてみましょう。

昨年末、産業競争力会議の雇用・人材分科会はこれまでの議論の中間整理を発表しました。そのなかには今後のテーマとして、「予見可能性の高い紛争解決システムの構築」があげられています。

私が座長を務める規制改革会議雇用ワーキング・グループでも、「労使双方が納得する雇用終了の在り方」について関係各所へのヒアリングや論点整理を行うことになっています。具体的にいうと、裁判所の協力を得ながらどんな場合に解雇は有効となり、どんな場合に無効となるのか。そして紛争を事後的に金銭で解決する場合、どの程度の金額で労働者の救済が行われているのかを丁寧に見ていこうと考えています。

なぜスピーディーに紛争を解決する仕組みが必要か。理由は、それがないと労使ともに大きなデメリットを受けてしまうからです。

解雇をめぐる裁判になると、労使ともに相当な時間と費用、労力が必要になります。しかも裁判で激しく争い解雇無効の判決を労働者が勝ち取ったとしても、企業に戻って楽しく働けるかといえば難しいのが現実です。

かつてのアメリカのように経営者と従業員が反目し合う敵対的労使関係であれば、会社に戻っても労働組合のバリアのなかで生きていくことができます。しかし労使が一体化している日本企業において信頼関係が壊れた後、再び職場に戻ってもそうはいきません。

スピーディーに紛争を解決する仕組みがあれば、経営者は「これだけのコストがかかるから簡単に解雇はできない」と考え、いい加減な解雇の抑止力になります。紛争が起こった場合も、あまり時間をかけずに解決に向かうことができるでしょう。

こういうと反発を受けるかもしれませんが、会社と労働者が解雇をめぐり多大な時間と費用をかけて争うより、一度トラブルになったらスピーディーに解決し、会社は労働者が次のステップに進めるよう支度金を支払い、「新しい職場で頑張って」と別れたほうがお互いにメリットがあると思います。

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