3月は人事異動の季節です。人材の採用や適切な配置は、組織の競争力に直結する課題といえます。その際に最近注目されているキーワードが、「ダイバーシティ経営」です。その主旨は「女性・外国人など、多様な人材を積極登用し、組織の活性化を図る」といったところでしょうか。実際、女性の管理職比率などに対して数値目標を設定する企業も増えてきました。

私も女性・外国人を日本企業が登用するのは、社会的に重要なことだと思います。しかし他方で、安直にただ「女性を増やせばよい」「外国人を増やせばよい」という風潮には懸念を持っています。安直なダイバーシティ(=多様性)はむしろ組織にマイナスの結果をもたらしかねない、という経営学の研究成果が出てきているからです。

女性を増やすと組織は停滞する!?

ダイバーシティには2種類ある

経営学では、ダイバーシティには少なくとも2種類あるとされています。1つは「タスク型の多様性」と呼ばれるもので、能力、職歴、経験などにおいて多様な人材を組織に取り込むことです。もう1つは「デモグラフィー型の多様性」です。これは性別、国籍、年齢といった「目に見える」属性についての多様性です。

この2種類のダイバーシティが組織のパフォーマンスにどのような影響を与えるかについて、経営学では過去40年あまりの間、研究が積み重ねられてきました。そして近年、これらの分析結果を再集計して、全体の傾向を評価する「メタ・アナリシス」という手法を用いた研究が、海外の主要学術誌で相次いで2本発表されました。その結果は、どちらも「タスク型の多様性は組織にプラスの影響を与えるが、デモグラフィー型の多様性は組織に何の影響も与えないか、むしろマイナスの影響を及ぼす」というものだったのです。

つまり、組織にとって重要なのはあくまでタスク型の多様性であって、デモグラフィー型の多様性だけを追求しても、プラスの影響を及ぼす可能性は低いのです。

タスク型の多様性はなぜプラスになるのでしょうか。この連載で何度も書いてきましたが、さまざまな能力、職歴、経験を持った人が集まることは、組織の知を多様化させ、それがイノベーションに結びつくからです。