2014年1月20日(月)

中途半端な「グローバル人材」はいらない

しごとの未来地図

PRESIDENT 2014年2月3日号

著者
入山 章栄 いりやま・あきえ
早稲田大学ビジネススクール准教授

入山 章栄1972年生まれ。96年慶應義塾大学経済学部卒業、98年同大学大学院経済学研究科修士課程修了。2008年米ピッツバーグ大学経営大学院博士号取得。ニューヨーク州立大学バッファロー校助教授を経て、13年より現職。著書に『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)がある。

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早稲田大学ビジネススクール准教授 入山章栄 構成=荻野進介 写真=Getty Images
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写真=Getty Images

昨今、日本では「グローバル人材」という言葉がやたらと注目されています。しかし、この言葉はなかなかの曲者だと私は考えています。何より「グローバル」の定義がはっきりしません。日本語だと「世界的」「世界中」ということなのでしょうが、そもそも「世界中どこでも活躍できる人材」なんてなれるものなのでしょうか。

その問いに対して興味深い示唆を与えてくれる研究があります。それは米インディアナ大学の高名な国際経営学の研究者であるアラン・ラグマン教授が2004年に発表したもので、世界の大企業における「グローバル企業」の割合を調べるという内容でした。

彼はまず「グローバル企業」を「世界中から満遍なく売り上げる企業」と定義しました。この定義のもと、世界のトップ企業をリスト化した「フォーチュン500」の中から売り上げデータがわかる365社を対象とし、その本拠地別に北米企業、欧州企業、アジア企業に分けたうえで、自地域からの売り上げが5割以下、他の2地域からそれぞれ2割強の売り上げを確保している企業を、「グローバル企業」と位置づけました。

そしてこの定義で分析してみると、晴れて「グローバル企業」といえるのは、先の対象企業365社のうちたった9社しかないという結果となったのです。

ラグマンは08年に今度は日本企業に特化した同じ趣旨の調査を行い、やはり似たような結果を得ました。当時、日本でフォーチュン500に入った64社のうち、「グローバル企業」の範疇に入るのはソニー、キヤノン、マツダの3社しかなかったのです。マツダは国内の売り上げがさほど大きくないことが結果に影響しているとも考えられ、他の2社とは意味合いが異なるかもしれません。いずれにせよ、世界中から満遍なく売り上げている日本の大企業が3社しかない、そこにはトヨタも本田も入っていないという事実は多くのみなさんが意外に思うはずです。

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