東京の後期高齢者は約214万人へ急増

もう1つ大きな問題として忘れてはならないのが、65歳以上の高齢者がこれから急増していくことである。そういうと「高齢化は過疎化が進んでいる地方の問題であり、これまで人口が増えてきた都市部には関係のない話だろう」と反論する人がいるはずだ。

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Q.どこの地域の人口の変化のグラフでしょうか?

グラフを見てほしい。まずは解答を示すと、A=下條村、B=大潟村、C=世田谷区、D=三鷹市、E=練馬区である。東京都内という人口の密集したエリアで、これから急速に高齢者の数が増えていくことに驚いた人が多かったのではないだろうか。

一方、不思議なことに代表的な過疎地である大潟村は、これからは高齢者の数が増えない。その理由は、大潟村では過疎化によって以前から人口が減っていた分だけ“高齢者予備軍”の数も減り、高齢者の絶対数が大都市に先んじて平準化していくからである。ちなみに下條村は20年前から若者の定住、子育て支援を行ってきたことで知られる村で、人口の構成のバランスが取れていくようになることがわかる。

半面、都市部は人口の集中によって増えた高齢者予備軍が、これからどんどん高齢者の仲間入りを果たしていくことになる。こうしたことが突き付ける課題として藻谷さんがあげるのが、(1)医療福祉の需要増加に対応した財源と人手の確保が難しくなる、(2)首都圏などの自治体の財政が困窮化して、地方に回す財源が枯渇してしまう、(3)高齢者が終の棲み家をどう確保するか――などだ。さらに「とくに注意が必要なのは、75歳以上の後期高齢者が急増していくことです」と藻谷さんは気になる一言を発する。