「過去のデータから計算した就業者と生産年齢人口の相関関数は0.8で、両者はほぼ連動しています。マクロ経済学では就業者数の増減は景気に左右されるものとなっていますが、ファクトベースで見ると生産年齢人口の増減で決まっているのです。これから生産年齢人口の減少にともなって就業者数が減るということは、勤労所得のある人が減っていくわけで、当然、消費にも大きな影響を及ぼしてきます」

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図3 90年代半ばから現役世代の数に連動を始めた名目GDP

そう指摘する藻谷さんは、私たちがよく口にする「デフレ」の正体について「主として現役世代を市場にしている商品の過剰による値崩れにほかならないのです」と喝破する。その値崩れを起こしている代表的なものが、土地や住宅、そして家電、自動車、家具などである。そうした供給不足ではなくて需要不足の現状だからこそ、生産年齢人口を通した需要の面から見た将来予測を重視しているのだ。

そして、図3のグラフは97年度時点を100とした場合の、生産年齢人口、就業者数、小売り販売額、雇用者報酬、名目GDPの推移を示したもの。80年代は現役世代である就業者数の伸びを上回る勢いで伸びてきた小売り販売額と名目GDPだが、90年代半ば以降は就業者数の動きに連動するようになっていることがわかる。

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図4 2040年の就業者数は4480万人へ減少

そこで気になるのが今後の就業者数だ。図4は各年代の就業者数をベースに試算したもの。10年に5960万人いた就業者は、40年には4480万人へ25%もの減少が予測される。その動きに名目GDPが連動していくのなら、12年度の実績値である480兆21億円をベースに単純計算すると、40年には360兆15億円へ縮小することになる。

そうした就業者数の減少によって所得報酬の減少がもたらされ、消費総額の減少、そして国全体の付加価値総額である名目GDPの縮小に連鎖していく“負のスパイラル”が引き起こされた結果、一体何が起きるのだろう。

税収が減り、1000兆円を超える国の借金の返済に赤信号が灯り始める。すると、道路、上下水道などの社会インフラのメンテナンスにも手が行き届かなくなる。そして、次第に人のいない空き家や空きビルが増えていき、市街地のゴーストタウン化が進んでいくことになるのかもしれない。