これから日本は急速な「生産年齢人口の減少」「後期高齢者の増加」の時代を迎える。そうしたなかで一体どういったことが起きるのか? 社会保障給付費の負担増にともなう現役世代の苦しい生活の姿が垣間見えてくる。
“確かな将来予測の指標”として中長期のシミュレーションに利用されているのが「人口予測」。人は30年後まで生きていれば、確実に30歳年をとる。人はいつ死ぬかわからないが、調査する対象者の数を増やしていけば、過去の実績をもとに各年齢での死亡率が高い精度で予測できるからだ。
わが国では、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が5年に1度の国勢調査の結果などをベースに「日本の将来推計人口」を発表している。「以前は出生率を甘く見積もりがちとの指摘もありましたが、最近は固めの数字を使い、信頼できるデータとなっています」(みずほ総合研究所上席主任研究員・堀江奈保子さん)と評価は高い。
最新のデータを見ると、2010年に1億2806万人だった総人口は、40年に1億728万人となって2078万人も減る見通しだ。そうした数値をもとに日本の潜在成長率を推計した第一生命経済研究所主席エコノミストの永濱利廣さんは次のように語る。
「15歳から64歳の生産年齢人口がそれ以外の年齢の人口に占める割合を示す人口ボーナスの下落速度が遅くなることなどを受けて、1%台割れだった潜在成長率は10年代後半から20年代後半にかけて2%前後まで回復していくでしょう。しかし、その後は下落に転じ、社人研が想定する低位の水準の出生率で推移したケースでは、39年にマイナス圏へ落ち込みます」
確かに日本の先行きは厳しそうだが、潜在成長力は生産活動に必要な資本や労働などの全要素を使った場合に、GDP(国内総生産)を生むのに必要な供給能力をどれだけ増やせるかを示したもの。必ずしも「供給増=需要増」とは限らない。そこで15~64歳の現役世代からなる「生産年齢人口」の変化に注目しているのが、日本総合研究所主席研究員の藻谷浩介さんだ。
図1と図2は最新の将来推計人口から藻谷さんが作成した5歳刻みによる年齢別の人口である。10年時点での生産年齢人口は、1947~49年生まれの“団塊の世代”と、その子どもたちで71~74年に生まれた“団塊ジュニア”が含まれていたこともあって、8174万人をキープしていた。しかし、30年後の40年になると団塊ジュニアも定年を迎え、生産年齢人口は5787万人に減ってしまう。