その結果、代理店にはふたつのコストが降りかかることになってしまう。

そのひとつが倉庫費用であることは言うまでもないが、もうひとつは、コンピュータの世界に特有のコストだ。この世界は製品の陳腐化が異様に速いため、同じ機能を搭載した製品の値段がどんどん下がっていく。したがって、代理店はより新しい製品を仕入れたほうが仕入れコストを低く抑えることができる。逆に言えば、在庫を抱えるリスクが他の商品に比べてきわめて大きいのだ。製品の陳腐化が速いマーケットでは、納期の長さがコスト増大に直結してしまうわけだ。

では、日本の工場で生産するとどうなるか。2週間かかっていた納期を5営業日に短縮することができる。すると代理店は「今月中」の注文を25日まで受注できるようになる。それが代理店の売り上げアップと、在庫リスクの低減に大きく貢献することはもうおわかりだろう。

シェア2~3%から20%まで急成長

図を拡大
中国の工場で生産するメリット・デメリット

こうして、日本HP単体ではなく代理店も含めた「総がかりのコスト」を考えてみると、人件費の安い中国でつくるよりも、人件費の高い日本で生産してリードタイムを短縮したほうが結果的にコストを圧縮できるのだ。少なくとも弊社の法人向けデスクトップ・パソコンの場合、国外生産品しかなかった時代に2~3%しかなかったシェアが、国内生産に切り替えてから急伸し、一時はトップシェア(20%)を取るまでに成長したのである。デスクトップで実証済みの「総がかりコストの圧縮効果」は、当然、ノートパソコンにも期待できるはずである。

円高が続いているが、パソコンのように多品種少量生産が主流の耐久消費財の中には日本で生産したほうがいいものがたくさんあることを、忘れないでほしい。

(構成=山田清機)
【関連記事】
平均年収1300万円の製造業、キーエンスはなぜ最高益を出せるか
下請けなのになぜ台湾企業は強いのか
スーパー「世界ビッグ3」はなぜ日本で勝てないのか
「ガンダムの経済学」なぜ不況下で最高益なのか?
レノボ、HP……PCメーカーの「Made in Japan回帰」はなぜか