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図1 大前提となる概念「ミッシー」を理解する

フレームワークを使う際に頭に入れておきたい概念がある。コンサルティング会社のマッキンゼーが1980年代につくったミッシー(MECE――Mutually Exclusive Collectively Exhaus tive)だ(図1)。これは「モレなく、ダブリなく」という意味で、物事の全体像を把握するために不可欠な考え方とされている。

考えてみると当然だ。全体観を持つためには、すべての要素を網羅的に押さえておく必要がある。モレがいくつかあって、本当に重要な部分が抜け落ちた状態で思考を始めると、全体最適にはたどり着けないだろう。ダブリもいけない。同じ要素が重複しているのにそれに気づかずにいると、思考に無駄や混乱が生じやすい。

とはいえ、全体を構成する要素をミッシーであげろといわれても、慣れないうちは難しいはずだ。じつはミッシーにもコツがある。まず意識してほしいのは「正反対」と「それ以外」だ。

例として「時間の使い方」を構成する要素を考えてみよう。真っ先に思い浮かぶのは「自分のために費やす時間」かもしれない。ミッシーでは、まずその正反対を考える。自分の反対は「他人」だ。ただし他人でも、家族などの身内と過ごす時間と赤の他人のために使う時間は質が違う。このように「自分」を起点に考えることで「自分」「身内」「他人」という3つの要素が浮かび上がってくる。ただ、これだけでは特定のところにハマり込んでいる可能性もあるので、思い切って「それ以外」も考える必要がある。自分や他人といった切り口のほかに、どんな時間があるのか。そうやって思考を広げていくと「仕事」という要素を拾うことができるだろう。

ミッシーには、適度な割り切りも必要だ。たとえばテレビ番組をミッシーで考えて、「情報・娯楽・教養」という大分類が浮かんできたとする。このとき、これで完璧に要素を網羅できたと胸を張って言うのは難しいかもしれない。しかし、完璧さにこだわると先に進めない。ある程度の要素をあげたら、「ほぼミッシー」として先に進む決断も大切だ。