初めてのマネジメント経験

アクセンチュア インクルージョン&ダイバーシティ統括 執行役員 
堀江章子さん

入社2年目のときに、私のチームに配属された新入社員4人の指導をする任務を担当しました。全員男性で、中には大学院を出ている人もいたので、2人か3人は私より年上です。2年目のアナリストが1年目のアナリストを育てる形ですが、それでも私のほうが1年の経験があるので、自分が覚えたことを教えるわけです。

最初は「なぜ4人も一度に面倒見なきゃならないの」とも思いましたが、そもそも年上の男性たちが素直にこちらの話を聞いてくれるわけでもありません。当時の私のマネジメントにも問題があったんです。仕事をお願いするときに、今思えば異常なくらい細かく管理していました。大袈裟に言えば、数分おきに「できた?」「まだ?」「いつできるの?」と進捗状況を尋ね、細かい仕事の進め方まで指示するようなこともありました。あとで上司から「もう少し気持ちに余裕をもって指導しなさい」と注意されたくらいです。

当社の場合、それくらい早い時期からマネジメント力を発揮するチャンスが与えられました。そういう経験をさせてもらえたのは大きかったと思います。当時、後輩だった人たちに、私のマネジメントがどうだったかは怖くて聞けませんが(笑)。

ロールモデルがいなくても

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堀江さんのキャリア年表

最近は、女性が働くうえでロールモデルが必要だという考え方があります。私が若手の頃はロールモデルとして意識する人はあまりいませんでした。一般的にみても上のポジションの人は男性ばかりでしたし、スキルの面で素晴らしいと思える人はたくさんいても、バックグラウンドや特長が違うので直接取り入れることができないこともありました。そんなわけで、身のまわりで「この人のようになりたい」とまるごとを受け入れたいと感じる人に出会う機会はなかなかありませんでした。

でも、この人はこの領域に強くていいな、この人の話の運び方はいいな、と参考になる人はいて、まるでパッチワークのようにいいところどりしてきたように思います。

最近は、身のまわりに働く女性も増え、ロールモデルになるような女性が増えてきたと思います。アナリストの女性をコンサルタントの女性が面倒を見て、コンサルタントの女性はマネジャーの女性に、マネジャーの女性はシニアマネジャーの女性に、シニアマネジャーの女性はMDの女性に見守られているので、「あの人が手がけている仕事は次は自分が担当するのだ」と身近に具体的に感じられます。

女性MDの数も十数人に増え、グローバルに活躍する人、ローカルで頑張る人、時短勤務のワーキングマザーなど、すごく多様になりました。MDもかつてのようなバリバリのキャリアというステレオタイプは当てはまりません。

それでも女性のなかには、昇進を打診されたときに踏み切れない人がいます。これは本当にもったいないことです。

女性の「昇進に対する不安」への対応

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手放せない仕事道具:手帳とペン。役員就任時にチームのメンバーからもらったプレゼント。

当社では社員一人ひとりにキャリアカウンセラーを置いて、昇進意欲がわかない理由を尋ねたり、仕事の動機づけに努めたりしています。管理職手前の女性社員にはスポンサーを置いて、適切に成長の機会が与えられているかどうかなども確認します。

女性の場合、“100%主義”のタイプが多いのも影響しているように思えます。周囲の人が「彼女なら任せられる」と判断しても、本人は自分の実力を控えめに見積もっているようなケースです。内心では「自分にできるだろう」と思っていても、一度は「考えさせてください」と答えるのが普通です。

そのカウンセラーが男性の場合、「そうなんだ、昇進の意欲がないんだ」と単純に思い込みがちです。しかしよく考えてみれば、コンサルティング業界に自分の意志で飛び込んできた女性が、男性よりも昇進意欲がないということはないでしょう。だから、昇進を躊躇したときは「本心からそう思っているのか?」を念押しして聞き、不安要素が何か確認する必要があります。

昇進意欲を表に出して「やります」と宣言した女性については、会社は全面的にサポートします。女性に対して「当社で昇進したいですか?」というアンケートを実施すると、「昇進したい」と答えた女性は、07年の25%から14年は50%に倍増しました。その数字に女性たちの本心が現れていると思います。