赤ちゃんと大人の飲み込み方は違う

もうひとつ、ミルクを飲むのが遅い子で、別の原因がある場合もあります。それが、飲み込み方の問題です。

赤ちゃんがおっぱいを飲むときと大人が水を飲むとき、決定的に違うことがあります。何だかわかりますか? 答えは、口を開けているか、閉じているかです。赤ちゃんは、口を開けて舌を前に出して、乳首をしごくような動きをしながら、おっぱいを飲み込みます。口はあいているのですが、前方はふさがれているので、うまくおっぱいがのどのほうへ流れます。

それに対して大人は、口を閉じて飲み込みます。舌を上下のくちびるに挟むような位置に持ってきたら、飲み込めませんね。大人の舌はもっと奥にあるのです。赤ちゃんのように、口を開けて舌を前に出す飲み込み方は、おっぱいを飲むための反射です。この反射が消えたら、離乳食のトレーニング(こちらは学習)を始めます。

大人のような飲み込み方の完成はおよそ3歳ごろで、口呼吸や離乳の状況などによって赤ちゃんの飲み込み方が混じっていることもあります。

“赤ちゃんのまま”だと窒息の危険がある

生澤右子(著)、有田秀穂(監修)『集中力が高まり、心の強い子になる! 噛む力が子どもの脳を育てる』(青春出版社)
生澤右子(著)、有田秀穂(監修)『集中力が高まり、心の強い子になる! 噛む力が子どもの脳を育てる』(青春出版社)

赤ちゃんの飲み込み方のままだと、コップでミルクを飲み込むときに舌が前に出るので、くちびるの間に隙間があいて、ミルクが口から出て、うまく飲み込めません。離乳食が完了しても、赤ちゃんの飲み込み方、つまり、舌を出すクセが残っていると、食事を丸呑みしてしまっている可能性もあります。

丸呑みの問題はいろいろありますが、まずは窒息の危険性です。「赤ちゃんの飲み込み方が、ここまでつながってくるの?」と驚いた方もいるかもしれませんね。でも、これは食事や呼吸に大きく関わることです。一度ついてしまったクセをそのままにしておくと、大人になってからも大変なのです。

歯並びの観点からも、赤ちゃんの飲み込み方で後々影響が出てくる場合もあります。いずれにしても、「赤ちゃんの飲み込み方がなくならない」と様子を見すぎていると、クセが定着してしまいます。ホームページを調べると、お口ポカンとともに、赤ちゃんの飲み込み方について書いてある歯科医院がありますので、気づいたら早めに専門家に相談するようにしましょう。

(主要参考資料)
・Kuroishi RC et al. Deficits in working memory, reading comprehension and arithmetic skills in children with mouth breathing syndrome: analytical cross-sectional study. Sao Paulo Med J.133(2):78-83. 2015
・ Jung JY et al. Investigation on the effect of oral breathing on cognitive activity using functional brain imaging. Healthcare (Basel). 29:9(6):645.2021
黒厚子璃佳 口腔機能の発達と育成 J Health Care Dent.23:17-23. 2022
・井上美津子 子ども達の未来のために-母子口腔保健と小児歯科医療の融合をめざして-昭和学士会誌.75(5)534-5411. 2015
・高田彩 早期矯正治療症例における機能的問題の発現状況. 東京歯科大学 歯科学報. 116(2):109-114. 2016
・山口秀晴 咬合異常の原因となる生活習慣:不正咬合は予防できるか 東京歯科大学 歯科学報.107(2): 157-162. 2007
・阿部雅子『構音障害の臨床』 金原出版. 改訂第2版 2008年9月
・Fukushima-Nakayama Y et al. Reduced mastication impairs memory function. J Dent Res.96(9):1058-1066.2017
・日本歯科医学会 小児の口腔機能発達評価マニュアル 2018 年3 月
・国立成育医療研究センター 乳幼児健康診査身体診察マニュアル 2018 年3 月