歯の生えかわり時期は“お口ポカン”になりやすい

ふだんから、何気ない瞬間にお子さんの口を観察してみてください。例えば、リビングの床でお子さんが遊びながら、大画面のテレビを見ているとき。これは、お口ポカンの“あるある”です。幼いお子さんにとって、テレビの位置は高いですよね。顔を上げて見るので、口が開きがちです。

自宅で映画を見ている家族
写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです

さらに、お子さんの口が劇的に変化するのは、歯の生えかわりの時期です。子どもの前歯が抜けると、途端にまだ小さなあごに巨大な大人の前歯が生えてきます。口を閉じるのに、より口の周りの筋力が必要になるのです。

保育園でも、大人の前歯が生えて、お口ポカンになっている園児さんがいました。保育園の先生がおっしゃるには、いつも口があいているし、言葉が聞き取りづらいのだそうです。

先生が保護者の方に聞いても、それほど気にしていらっしゃらないとのこと。もう一度、口の中を見ると、確かに上の前歯が外に向かって出ているので、舌が上の歯の裏の内側に届きにくい状態です。

虫歯になりやすく、免疫力も低下する

これだと、「た・な・ら」行の音がしっかり聞こえないかもしれません。舌の力もあまりなく、口の中で舌は平らにどてっと休んでしまっていました。本来、口を閉じていれば、舌は上の前歯の裏に近い位置で姿勢を高くして出番を待っていなければなりません。

まずは、本人に「できるだけ口を閉じるようにしてみてね」と伝えた上で、私たちの報告書とともに、先生からも保護者の方にお話をして、「耳鼻科や矯正歯科の受診を考えてみてください」とおすすめしました。

【図表】正しい舌の位置とは
イラスト=村山宇希

お口ポカンをそのままにしておくと悪い理由は、他にもあります。口の中が乾きやすく、むし歯になりやすかったり、歯ぐきが腫れて血が出やすかったりします。また、口臭がしたり、乾燥で味を感じにくくなったりします。免疫の観点からも、外気が直接気道に入ってくるので、風邪をひきやすかったり、アレルギー疾患になりやすかったりします。

さらに、くちびるが閉じないので、やがて前歯が出てきて、いわゆる「出っ歯」になったり、奥歯でかんだときに上下の前歯があいてしまう「開咬かいこう(オープンバイト)」になったりする場合が多いのです。

お口ポカン≒口呼吸は、脳や顔の成長、歯並びにも悪影響が出ます。最近では、歯科医院で早い段階でのお口ポカンに対応するところも増えてきましたので、お口ポカンに気づいたら、ぜひ相談してみてください。