多忙でストレスフルな日々の中では、つい仕事以外のことに意識が向きにくくなる。質の高いパフォーマンスを維持するには、「自分に合った休息」の意識的な確保が欠かせない。

長時間労働の是正、有給休暇取得の促進などが社員のモチベーションアップや生産性向上を後押しし、企業の収益性の拡大、成長につながる――。程よく「休息を取る」ことが、個人にとっても組織にとってもメリットをもたらすことが認識されつつある一方で、働き方改革がなかなか進まず、社員のパフォーマンスの低下、さらには離職リスクや企業イメージの悪化といった課題を抱えているケースも少なくない。

厚生労働省が運営する「働き方・休み方改善ポータルサイト」では、企業と労働者を対象にした調査結果が公表されている。例えば勤務先の従業員数別に「現在の仕事時間と生活時間は、バランスが取れているか」と質問したところ、「取れていない」「あまり取れていない」と答えた合計は30人未満の企業(n=906)で44.1%、30~99人(n=687)で50.4%、100~999人(n=1238)で48.7%、1000人以上(n=1169)で43.7%と、いずれの規模の企業でも「仕事と生活のバランスが取れていない」と感じている人の割合はほぼ同じで、4割~5割を占めた。その理由としては「所定労働時間が長いから」「残業時間が長いから」「年次有給休暇が取りづらいから」などが挙げられている。近年、採用難や早期離職に悩む企業が増加していることも踏まえると、これまでのような「働き続けて成果を出す」という考え方から、「休める環境を整えることで成果を出せる」組織、個人への転換を図っていくことが、さまざまな経営課題を改善する鍵といえそうだ。

「6時間睡眠」であっても疲労はどんどん蓄積する

国としても従業員の生活時間や睡眠時間の確保を目指して、2019年4月より、終業時刻から次の始業時刻の間に一定時間以上の休息時間(インターバル時間)を設ける「勤務間インターバル制度」の導入が事業主の努力義務となった。期待できる導入のメリットは、主に①従業員の健康の維持・向上②従業員の確保・定着③生産性の向上だ。

「勤務間インターバル制度導入・運用マニュアル(全業種版)」で紹介されている米国の「慢性的な睡眠不足とパフォーマンス低下の関係」に関する研究では、ランダムに提示される刺激に対して「4時間の睡眠が6日間続くと一晩徹夜したのと同じくらいの遅延反応、10日以上続くと二晩徹夜したのと同等レベルの遅延反応」が生じるとしている。「6時間睡眠」だと一定程度の睡眠時間を確保できている印象があるが、それが10日以上続くと「一晩徹夜したのと同等以上の遅延反応」が生じる結果となった。当然、判断能力や仕事の効率性は低下し、本来の仕事のパフォーマンスを発揮できなくなる。それどころか、重大なミスを引き起こすリスクも高まるだろう。

もちろん多忙な時期もあればそうでない時期もあり、同じ生活ペースを維持することは簡単ではない。そうした中でも生き生きと働くためには、やはり「休息が不可欠である」という意識を当たり前のものとして自身に根付かせ、「仕事に集中する時間」と「プライベートに集中して自分や家族のために使う時間」を切り分けてメリハリをつけることが大切だろう。趣味に打ち込む、旅行先で思い切り羽を伸ばす、あるいはスポーツで汗を流す――こうした「自分らしさを取り戻せる」過ごし方やお気に入りの場所などを持っておくと、安心感や余裕も生まれる。どんな休み方なら心地よい余白が生まれるのか、まずは前向きなイメージを描くことから始めたい。