マダニによる感染症が相次ぎ、人やペットが死亡する事例が報告されている。ペットジャーナリストの阪根美果さんは「マダニは肌に付いてから吸血するまでに時間がかかるので、帰宅後すぐに入浴・シャワーで流すと予防策になる」という――。
ヒトの皮膚の上を歩いているマダニ
写真=iStock.com/Ladislav Kubeš
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感染したネコを治療した獣医師も死亡

今年5月、茨城県内でペットとして飼われていた1歳のネコが、マダニが媒介する「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)」に感染し、死亡しました。屋外へ脱走した際に耳に多数のマダニが付着していたとのことです。動物病院でマダニを除去したものの、高熱、食欲不振、嘔吐の症状が見られ、数日後に息を引き取りました。

6月には鳥取県でも同様に1歳のネコが、食欲不振で入院。5日後に死亡したため、国立感染症研究所で検査をしたところ、SFTSに感染していたことが判明しました。

さらに、SFTSに感染したネコを獣医師として治療した三重県内の高齢男性が5月、呼吸困難などの症状を訴え病院に搬送され、数日後に死亡する事例も発生しました。検査の結果、この獣医師もSFTSに感染していたことが判明しましたが、マダニにかまれた痕はなく、感染経路はわかっていません。

愛知県豊田市では6月、50代女性と90代男性が死亡し、SFTSの陽性反応が出ました。50代の女性は草むらで除草作業をしていたといい、マダニにかまれたと見られます。静岡市でも60代女性が感染し、死亡しました。

「新興感染症」でまだ不明な点が多い

国立感染症研究所の研究によると、SFTSの致死率はヒトで最大3割、ネコでは非常に感受性が高く、6~7割が重症化し死に至るとしています。近年では、「ネコ→ヒト」「イヌ→ヒト」「ヒト→ヒト」への直接感染も複数報告されているため、SFTSを正しく理解し、適切な感染防止策を講じることが重要なのです。

SFTSは、2011年に中国の研究者により初めて報告された「新興感染症」です。日本国内では2013年1月に初のSFTS感染が報告されました。SFTSウイルスは非常に新しいウイルスで、まだ不明な点も多いとされています。

国際感染症センターの資料によると、ウイルスを保有するマダニの吸血により、多くの哺乳動物がSFTSに感染します。感染した動物の多くは発症せずにウイルス血症を呈し、吸血した新たなマダニにウイルスを伝播させます。一方、ヒト、ネコ、イヌ、チーターは致死的な症状を呈し、前述のようなヒトへの直接感染も報告されています。