“勉強の無限ループ”の入り口になる
結果として、レッスンを受けた子どもたちは同年代と比較して、認知能力テストで高いスコアを一時的に出しました。ピアノを習った子どもたちは、そうでない子どもたちと比べて、10歳、11歳(小4・小5にあたる年齢)での認知能力で優位をとっていたのです。ただしこの差は12歳時点ではほぼなくなったともされており、恒久的な差を生み出すものではないようですが、この認知能力の「伸び」が、学習の理解や習得に役立つと考えられます。
「ピアノの習い事」をすることで
→「授業が分かる」
→「テストで点数が取れる」
→「親や先生など周りの大人から褒められる」
→「次はもっとやってやろう」
と勉強に対して前向きになれるポジティブな循環が生まれるのです。
つまりピアノの習い事が「できるから楽しい。楽しいからもっとやる」無限ループの入り口になるならば、学習に貢献するといえると考えられます。
実際に東大生は、勉強に関して「得意だったから好きになった人」が多いのです。東大生にはピアノ経験者も多く、さらにそのほとんどが中学受験経験者ですが、“勉強の無限ループ”へのきっかけをピアノを通じて小学校高学年時点で得られたことが、将来の進路に影響を与えているのかもしれません。
幼少期にピアノを習っていた東大生も「ピアノの自主練習が、何かを自主的に反復練習することへの苦手意識を薄れさせてくれた」と話していました。
「ステップアップ」がわかりやすい
また、ピアノには認知能力の向上に加えて、根気や自律性といった力を育む側面もあるようです。非認知能力研究者で当時、岡山大学准教授(現・IPU 環太平洋大学特命教授)の中山芳一先生に伺ったところ、ピアノ学習が持つ構造に注目していました。
非認知能力とは、数字などで測れない能力を指す言葉です。例えば、計算能力は点数として明示できますが、自信や忍耐力、思いやりなどは、明示できません。こういった「数字にできないけど、確かに存在するであろう」能力を、「非認知能力」と呼びます。
中山先生は過度な早期教育には反対の立場をとられていますが、ピアノ特有の、明確に段階化されたカリキュラムシステムについては、目を見張るものがあると評価しています。ピアノの上達過程と、学力を上げる過程とに似通った部分があると考えているためです。
ピアノはステップアップがわかりやすい習い事です。例えば、最初の教本「A」があり、これをクリアしたら次に「B」が、それもクリアしたら今度は「C」が……と、踏むべき段階と順序がハッキリしているので、仮に指導者のスキルに差があっても、教本の順番だけ分かっていれば、ある程度のクオリティが保たれます。



