上達するまでの過程が勉強と似ている

さらに、ピアノの習い事の大きな特徴が、教室に通うだけで完結しないこと。自宅での練習が本懐であり、あくまで教室は自主練習の進捗発表と軌道修正が行われる場所でしかありません。子どもたちは、教室に通い、教本を基にレッスンを受けますが、帰宅後も次のピアノの日までの上達を目指して練習を積みかさねることが求められます。

ピアノの楽譜を指すペン
写真=iStock.com/beavera
※写真はイメージです

これは、勉強における「授業と復習のサイクル」と非常に似ています。実は、受験を制す秘訣は自習の充実にこそあるのです。受験までの大半の時間を占めるのは授業ではなく自習です。成績が伸びる子は、塾や学校を「方向性」を定めてもらう場所にすぎないことをよく理解しているため、授業以外でしっかり勉強する癖がついています。

ピアノの習い事は、「ステップを積み重ねる感覚」を、勉強以外の角度から子どもたちの無意識へ刷り込んでいるのではないか。これが中山先生の仮説でした。ピアノは、小学生の子どもたちに、習慣化を刻むために役立っているのかもしれません。

実際、ピアノの習い事について東大生に尋ねてみると、「自分から始めたくて、楽しくて仕方がなかった」と話す東大生もいれば、「親からやらされていた」と苦い思い出を語る東大生もいました。ただし、それでも「確かに机に向かうのは苦ではなくなっていた」「努力を積み重ねる感覚を身につけたのは、ピアノがきっかけだったかもしれない」などと振り返る声も多く、継続して取り組んだ経験そのものが、のちの“学びの土台”になっていたと考えられます。

「できた」を積み重ね、続けてもらうことが重要

受験や学力向上を視野に入れると、ついつい「子どもに何かをさせたい」と思いがちです。私自身も親御さんから「どんな習い事がベストか」と聞かれたことは一度や二度ではありません。しかし、本当に大切なのは「どうすれば“自分で学ぶ力”を身につけられるのか」という視点です。

布施川天馬、西岡壱誠『勉強にかかるお金図鑑』(笠間書院)
布施川天馬、西岡壱誠『勉強にかかるお金図鑑』(笠間書院)

ピアノは認知能力や学習習慣、そして継続力といった、学びの土台を育む可能性を秘めた習い事です。ただし、その価値を引き出せるかどうかは本人の感じ方によるところも大きいでしょう。「やらされていた」と語る人ですら、振り返れば“何らかの役に立ったかも”と感じていたのが印象的でした。

東大生の話からも、ピアノは「学ぶ姿勢」を育むためのひとつの入り口として機能していたケースが見えてきます。小さな「できた」の積み重ねが自信となり、将来の大きな挑戦につながっているのかもしれません。

とはいえ、親のエゴで「やらせる」習い事では、きっと長続きもしませんし、子どものやる気や好奇心を削いでしまいます。どんな形であれ、東大生の経験談のように、本人に全力で取り組んで成功体験を積み重ねてもらうことが重要のように感じます。自分に向いているかどうかは、試してみないとわからないこともあります。「できた」を積み重ねるための最初の一歩を踏んでもらうきっかけの一つとして、ピアノの習い事を検討してみてはいかがでしょうか。