本質的な楽しさを知っていれば苦境も乗り越えられる

例えば、サッカーの本質的な楽しさは、おそらく「シュートを決める/シュートを止めること」でしょう。そのために「個人プレー」「連携」「作戦」がある。個人の素晴らしい技量を発揮し、それがパス回しなどのチームプレーにつながり、守備陣形などの作戦がバッチリはまって、初めて1点が取れるし、守れる。90分戦って0-0もありうる競技ですので、最後のシュートを決めるところまで持っていくことに、サッカーの楽しさの本質の全てがあるのではないでしょうか。

そんなふうに野球にも、バスケットボールにも、剣道にも、ダンスにも、本質的な楽しさがあります。本質的な楽しさを知っていれば、たとえ苦しい場面にあったとしても、子供でも乗り越えることができます。

親御さんは、わが子がこの場で活動していて、そのスポーツの本質的な楽しさを感じることができているかな、そういう視点でチームを観察してみてはどうでしょうか。

もちろん、子供でもスポーツの本質的な楽しさを感じとれますが、それよりも「友達とのつながり」や「居場所がある安心感」に重きを置いている場合もあります。いずれも、子供と実際にちゃんと話をし、子供の思いを聞いてから、チームを変わるかどうかなどの決断をされることが望ましいですね。

サッカーボールを蹴る少年の足
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2つの要因から考える辞め時

とはいえ、つい結果を求めてしまうのが親というもの。子供が「辞めたい」と言っても、「次にレギュラーがとれるまで頑張ってみよう」「○級がとれたら辞めてもいい」と、親のほうが辞めさせることに躊躇してしまうのです。

本当に辞めさせるべきかどうかは、次の2つの要因から検討できます。

一つは外的要因。「指導者やチームメイトに問題があり、チーム状態が変わらない」場合です。地域のスポーツチームでは、指導者の影響力は思っている以上に大きく、保護者会や子供たち自身が、いくら工夫して努力しても、指導者の姿勢や考え方が変わらない限りは、根本的な問題が解決されません。実際、指導者がマイナス面ばかりを指摘したり、いまだに大声で怒鳴ったりしている地域のスポーツチームは子供が集まらなくなってきています。

チームメイトがネガティブな声掛けをしているようなチームも問題です。子供の自信をそぐような環境だと判断した場合、親は子供の思いも聞いて、すっぱり辞めて他のチームを探すほうが賢明です。

もう一つは内的要因です。そもそも“努力”が、なぜ素晴らしいかというと、「努力が実る」からではなく、「努力したら成長する」からです。つまり人生は努力の先に、いつも目標達成=ハッピーエンドがあるわけではない。しかし、努力の過程で必ず人は成長しますので、努力の目的は“成長”であるわけです。

周りと自分を比べて落ち込む、なかなか上達しない。もしかしたらレギュラーとして試合には出られないかもしれない。でも、成長している。去年はできなかったことができている。体力もついている。大きな声も出せるようになった。素晴らしいじゃないか、ということです。

そういう考え方や気持ちを、子供自身が持てているかどうか。これが内的要因です。