幼児期は親の判断を見せる時期
Q.子どもの自己主張が激しく、どう説得しても聞き入れてくれません。つい親のほうが受け入れてしまいますがいいのでしょうか?
A.「ダメなものは、ダメ」と言っていいのです。ダメなものは、ダメと示すことが大事
幼児期は判断や選択について、判断材料をどんどん吸収している時期です。
親や先生の選択を見ながら、何がよくて、何がダメなのかを学んでいるのです。
道徳的なことに関しても、最初から何が正しくて、何が間違っているのかがわかっているわけではありません。子どもは、まっさらな状態です。周りの大人の振る舞いや価値判断に触れるうちに、だんだんとわかる、知るようになります。
「こういう時は、こうするものなんだよ」という判断を示してあげることで、子どもは徐々に判断の仕方を学んでいきます。この積み重ねが、大きくなってからの判断の根拠になっていくのです。ですから、幼児期を「判断ができない時期」と捉えるのではなく、「親の判断を見せる時期」と考えるといいと思います。
そもそも子どもは、大好きな大人のまねをしたがるもの。それは、行動だけでなく、考え方や思考の巡らせ方にまで及びます。ぱっと決めるのか、深く考えて決めるのかといった態度は、驚くほど親子で似ていることがあります。内面も、まねを通して似てくるのです。
「ダメなものは、ダメ」という姿勢を示すことは、とても大切です。
「ダメ」という言葉そのものを使うのではなく、やっていいこととよくないことの一線をはっきり示すということです。
「ダメなものは、ダメ」でいい
子どもの言う通りにしていると、子どもは判断の基準を親から学ぶことができず、何が正しくて、何が間違っているのかがわからなくなってしまいます。ちょっと歴史を紐解けば、「ダメなものは、ダメ」と言っていた時代がすぐそこに見えてきます。会津藩校の日新館では、6歳から9歳までの藩士の子どもに、「什の掟(じゅうのおきて)」が示されていました。いくつかの教えは、現代ではそぐわないものもありますが、「一、嘘言(うそ)を言ふことはなりませぬ」「一、卑怯な振舞をしてはなりませぬ」「一、弱い者をいぢめてはなりませぬ」などは、普遍的な教えだといえるでしょう。
そして注目すべきは、最後に示された「ならぬことはならぬものです」という一文です。まだ判断ができない小さな藩士の子に、「ダメなものは、ダメなのだ」と念を押しています。
大人には理由が必要かもしれませんが、幼い子どもには単に「ダメ」と示すだけでもいいのです。嘘をつかない、卑怯なことをしない、弱いものをいじめないということに、理由はいりません。



