園選びや習い事など子どものことを決める際は子どもに判断を任せてよいのか。こども園園長の赤川幸子さんは「幼い子どもは先の見通しを持って判断することができない。大人が決めるべきことと子どもに選択させることは明確に分けるべきだ」という――。

※本稿は、赤川幸子『「個性」と「才能」が伸びる シュタイナー式子育て』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

「子どもは子どものまま」尊重する

Q.ある子育て本で、「子どもも大人と同じ扱いをしましょう」と書かれていました。なので、どうしたいかをいつも本人に聞いているのですが、あいまいな答えしか返ってきません。

A.「どうしたいのか」の判断を子どもに譲ってはいけません。
「どうする?」と聞いたなら、答え通りにしましょう

最近の親御さんには、「子どもを一人の人間として尊重しよう」という気持ちが強くあるように思います。子どもを労働力と考えていた時代から、まだ100年も経っていないことを考えれば、これは素晴らしい進歩だといえるでしょう。

ただ、子どもを尊重しようとする気持ちが強すぎるあまり、「子どもを子どもとして扱っていない」ように思えます。そのために、大人の意図がうまく子どもに伝わらないということが多いようです。

また、「今を生きる幼児期の子ども」に、いろいろと考え合わせて大事なことを決めさせるのは、まだ早いのです。

子どもを人として尊重するということは、「子どもと大人を同じに考える」ということでなく、「子どもは子どものまま」尊重しなければなりません。

スーツを着る父親と息子
写真=iStock.com/Mikolette
※写真はイメージです

「どうする?」と聞いた時は子どもの答え通りに

よく目にするのが、子どもに「どうする?」とたずねる場面。意向をたずねるのはよいのですが、実は親の中に「こうしてほしい」という思いがあり、最終的には親の思う方向へと導いてしまうということが多々あります。「AかBか」を聞き、子どもが「A」と答えた場合です。「そっか。Aを選びたいんだよね。わかるよ。でもね、BはこうだからBにしない?」というようなやり取り。

「あなたの言うことはわかる」とワンクッションを置くことで、一見子どもを尊重しているようにも見えます。しかし実際は、子どもを説得し、否定しているのです。これでは、子どもの中には不満が積もるばかりです。

「これ、もういらないの? どうする?」と聞く母親に対して、「捨てる」と答えると、「でも、もったいないじゃない」と言われる。このようなやり取りは、当たり前にあるはずです。

もし、親の中にはじめから「捨てる」という選択肢がないのであれば、子どもに「どうする?」という質問をすべきではありません。

「どうする?」と、子どもの意見を尊重するふりをして、結局は親の思った通りにさせてしまう。そのようなことが続けば、子どもは意見を言うこと自体をやめてしまいます。なぜなら、「自分が何を言っても、結局は親の思い通りになる」と学習してしまうからです。

「どうする?」と聞くときは、必ず子どもの答え通りにする。

そのことを忘れてはなりません。