ハーバード生が持つ三つの魅力
とはいえ、2日間コースではハーバード生が子供たちに関わるのは2日目のみでたったの2時間ほど。子供たちを一瞬で魅了するハーバード生とは、真理さんから見てどんな人たちなのだろうか。
「自分の“好き”をとことん突き詰めて得意にしてきた人たちです。そもそもハーバード大学の入試は、エッセイ、成績、課外活動、人物評価からなり、合格率は4.6%という超難関。日本の大学の入試は、ほぼペーパーテストだけなので(最近は総合型選抜や学校推薦型選抜など多少変わってきている)、受験に向けて勉強に集中してきた子が多い。
一方、ハーバード生は一つの専門性を磨きながら、複数のチャレンジをしてきています。日本の大学生とは、大学に入学する18歳までに積み上げてきたものが違います。彼らの話し方や表情、ジェスチャーには自信があふれていますから、参加した子供たちにもそれが伝播するのです」
また、ハーバード生は安全基地をつくるのが抜群にうまいと言う。
「安全基地とは、子供たちが間違えても大丈夫、言いたいことが言えると安心できる場のこと。そもそもハーバード大学の学生は、世界100カ国から集まるので、キャンパスに多様性があります。自分と意見が違う人間でも認め合い、ダメなところではなくいいところを探してリスペクトする。SIJに参加する子供たちのことも、何でもいい、一言でも発言したらベタ褒めしてくれます。
『I am……Ryo.』なんて、自分の名前を伝えることすら恥ずかしがっている子にも、『Hi! Ryo. なんてすてきな名前』『あ、目を合わせて言ってくれたのね』なんて具合にどんどん褒めてくれるのです。だから、好きなことも聞いてほしくなる。話せば話すほど褒められるので、子供たちはあれも言おうこれも言おうと好奇心を120%膨らませてネタ探しを始めます。そして、自己紹介文はどんどん詳しくなり、スピーチの声も大きくなって、いつの間にかハーバード生のジェスチャーをまねている。これもマジックです」
さらにもう一つ。リーダーに欠かせない要素をハーバード生は持っていると言う。
「ズバリ、信頼性と好感度です。私が、なぜプログラムにスピーチを入れているかというと、子供たちに説得力のある話し方を身に付けてほしいからです。プレゼンにはもちろん、これから人と協働して何かをするとき、説得力が大きな武器になります。話に説得力を持たせるには、いわゆるアリストテレスの説得の3要素“エトス”“パトス”“ロゴス”が必要です。エトスは信頼。人気の俳優さんが『このプリンが好き』と言ったらそのプリンが売れますが、知らない人や怪しい人が言っても売れませんよね。信頼性と好感度のある人にならないといけないから、いじめをしたらダメだよといった話もします。
パトスは英語のパッションで情熱のこと。『そうだ、そうだ』と聞き手に共感してもらうために必要な要素です。ロゴスは論理で、ちゃんと中身のある内容でなければ説得はできません。ハーバード生にはこの三つが備わっています。私が12年間関心しているのは彼らの話し方です。まず、同じ話をしつこく繰り返しません。新しく発話するときには何かしら新しい情報を加えます。そして、要点を短く話す。これは聞き手の時間を奪わないようにという配慮からきているようなのです。私も見習っています」
そんな魅力あふれるハーバード生は、卒業後も世界中のあらゆるところで活躍している。SIJに過去に参加したハーバード生の中には、国連で環境問題のアクティビストとして活動している人、24歳という若さで母国の国会議員になり再選され続けている人、日本で就職して定住し、今も活躍している人もいるそうだ。
当然ながら、夏休みの時期であっても彼らは世界中からひっぱりだこだ。AmazonやGoogleなどで高額の報酬でインターン生となる学生も多い。そんな優秀な彼らが、報酬は交通費と宿泊費のみのSIJへ、毎年100人以上が応募してくるという。定員は10人なので倍率は10倍!
「おこがましくも(笑)、私がハーバード生の書類審査と採用面接をして選ばせてもらっています」と真理さん。なかには、2度、3度とやってくる学生もいるという。
「13年前、SIJを始めたときは、すみれさんの友達を講師に呼んだのでしょうと言われましたが、とんでもない。彼らはとても現実的なので、自分にメリットがあることしかしません。詳細は企業秘密で言えませんが、私は彼らに、彼らのメリットになることを与えています。その一つが、一人一人をよく見て本人の輝く場を与えるということ。また、日本の子供たちが自分たちと接することで変わっていく姿を見られることも大きな魅力になっていると思います。ここでの経験が彼らのその後の人生に生きていることは間違いありません。毎年、多数の応募があるのは、口コミで評判が広がっているようなんです。SIJの経験はすごいよって」
リピーターまでいるというのだから、その評判は本物のようだ。





