ヒントを与えることが逆効果になる
実際、幼児期から小学生にかけての発達段階でも、「考えている時間」を遮らずに待つことが、深い思考力や持続的注意力を育てるうえで極めて重要だとされます。東大生の親は、子どもが沈黙している時間を「何も考えていない時間」とは見なさず、「思考の種が芽吹いている時間」として見守っていたのです。
親子の関係性の中で生まれるこの「待つ時間」こそが、子どもの中に深い思考の根を育てていくと考えています。
逆に、相手の話を待つことができず、こちら側からたくさんいろんな話をしてしまう家庭もあるでしょう。「私はこうだと思うわよ」とか「私が小さいときはこんな風に考えていて」とか、良かれと思ってヒントとしてそうした言葉をかける場合もあるでしょう。これが悪いことであるということはありませんが、行き過ぎてしまうと良くありません。相手の話をただ聞いて、それに従えばいいという感覚になってしまい、自分で考える習慣が身に付かないからです。
例えば、お子さんが「志望校どうしようかな」と口にしただけで、「お母さんはこう思う」「やっぱり就職を考えたらこういう学部がいいと思う」と、次々に親御さんの考えを展開してしまっているという家庭がありました。
話し始めるまで辛抱強く「待つ」
親御さんに話を聞くと、それらの行為は決して悪気があったわけではなく、むしろ“ヒントを与えよう”“選択肢を広げよう”という善意からの言葉だったのです。しかし、お子さんにとっては「どうせ何を言っても否定される」と感じるきっかけになってしまい、それ以降は相談すらしなくなってしまった……という家庭がありました。とても勿体無いことですよね。
このように、相手の話をしっかり聞いてあげる親御さんでないと、そもそも会話自体がなくなってしまう危険性があるのです。
さて、親が子どもの話をきちんと「聞く」ことには、「思考力」を育てること以外にもう一つ、大きな意義があります。それは「自己肯定感」を育てるということです。子どもは「自分の考えには価値がある」と感じるようになります。
すると自然に、自分の意見を持つこと、深く考えること、そしてそれを表現することに対して前向きになります。
「話し上手」な親は、子どもを惹きつける力はあるかもしれません。しかし「聞き上手」な親は、子どもの中にある種を芽吹かせる力を持っていると考えています。時には自分の意見をあえて言わず、静かに問い、じっくりと待ち、深く耳を傾ける。相手が話始めるまで、辛抱強く「待つ」ということをしていく。このような親子の対話が、思考力と自己肯定感を育てていくと考えられます。ぜひ参考にしてみてください。



